リードシートとはメロディとコード進行をA4サイズ1ページまた2ページにまとめた楽譜のことです。

ジャズではさまざまな曲のリードシートを集めたリアルブックと呼ばれる本が販売されています。

しかし、演奏したい曲や分析したい曲、好きなアーティストの曲が全て載っているとは限りません。

リードシートがないので演奏や分析を諦めてしまうのはもったいないことです。

もし自分でリードシートを作れるようになれば、リアルブックに載っていない曲でも演奏や分析をすることができます。

そこで、ここではクリフォード・ブラウンのSanduを例にリードシートの書き方と作り方を紹介していきます。

コピーする曲のバージョンを決める

「このバージョンをコピーしたい!」と思えるバージョンを探しましょう。

ここではクリフォード・ブラウン & マックス・ローチのアルバムSTUDY IN BROWNに収録されているSanduをコピーしていきます。

『Study in Brown』
録音日:1955年2月23
Clifford Brown - trumpet
Harold Land - tenor saxophone
Richie Powell - piano
George Morrow - double bass
Max Roach - drums

拍子とテンポを調べる

カウントしながら曲を聴いて何拍子かを調べます。

4分の4拍子(4/4)でカウントできるのでSanduの拍子は4/4になります。

それに合わせてテンポを調べましょう。昔の音源はクリックを流しながら録音していないので、大まかなテンポ、ここでは136にします。
Sanduリードシート、タイトル、テンポ、拍子、作曲者、アルバム表記例

拍子記号を書く際はまだ曲のキーが分からないので、調号を書くスペースを少し空けておくのがおすすめです。

曲のキーを調べてから拍子記号を書いても構いません。

曲のサイズを調べる

イントロ、メロディー、ソロ、エンディングがそれぞれ何小節あるか数え、曲の全体像を軽くスケッチします。

Sandu曲のサイズ表記例

曲を通して聴くだけで分かってくることもあります。

今回のsanduの場合、12小節で1コーラスとなっていることからブルース進行の曲という推測ができます。

楽譜の下書き

曲のサイズが分かったらそれに合わせて下書き作ります。

Sanduリードシートのサイズ表記例
メロディーは2回繰り返しなのでリピート記号を記譜。

ソロセクション終わりの後テーマも繰り返しなのでセーニョに(with repeat)表記を追加。

エンディングはキメが入るのでコーダ表記にしています。

メロディーをコピーして書き込む

全体の楽譜ができたら音をコピーして書き入れていきます。何からコピーしていくかは自由ですが、このサイトでは

    1. メロディー
    2. ベースライン
    3. ピアノのヴォイシング。
    4. キメなどの情報。

という順番でコピーしていきます。

Sanduのメロディはトランペットとサックスの2声。まずは両方を書いてみましょう。

Sanduメロディー2声譜面例

このまま書いていくと読みづらく、かつ大変なので、サックスがオクターブ下を吹いている箇所は8va bassa(1オクターブ下で弾く)の表記にします。

Sanduメロディー2声8vabassa表記譜面例

オクターブ以外のサックスの音は小玉表記することでトランペットと区別しやすくしています。

またこの時点で曲のキーを判断することができます。

調号

ブルース進行想定でメロディがEbから始まっているので、Ebブルース=Ebキーになります。

調号を加えて残りのメロディーを書き込みましょう。

Sanduメロディー調号付き譜面例

メロディーをコピーしたらベースラインからコードのルートをコピーしていきます。

ベースラインをコピーしてコードのルートを書き込む

ベースラインをコピーすることでコードのルートが分かります。

ただしジャズの場合、ベースがコードのルートを弾かないこともあるので注意が必要です。

情報量は極力多い方が良いので、前テーマと後テーマの4コーラス分をコピーして、各小節1拍目の音をルートと仮定してコードネームを書いてみましょう。

前テーマのベースライン

Sandu前テーマのベースライン譜面

後テーマのベースライン

Sandu後テーマのベースライン譜面

ベースが聴きとりづらいときは

音源を1オクターブ上げると聴こえやすくなります。オーディオ編集ソフト(無料、有料問わず)には必ず付いているので試してみてください。

次はピアノのコンピングからコードの種類を書き加えます。

ピアノのヴォイシングをコピーする

ピアノのヴォイシングはそのままだと弾きづらいので、弾きやすくアレンジしてコピーしていきます。

ピアノコンピングのEb7コードフォーム
SanduのEb7コードフォームダイアグラム

Sanduピアノのコンピングをギターアレンジした楽譜

ここまでできたらベースラインを組み合わせてコードネームを付けていきましょう。

コードを拾うとき、ピアノが鳴らした音を完全に聴き取れるものですか?
はい。聴き取れます。
ただリードシート作りでは完コピの必要はないので、ピアニストが弾く右手のボイシングだけ聴き取れるようにしておけばOKです。
はじめは「無理!」と思っていても、やっていくうちに聴き取れるようになるので安心してください。

コードネーム付けとキメのリズムを加える

コピーしたベースラインとピアノのヴォイシングを見比べると、ベースがルートを弾いていない箇所があります。

正確に書くならオンコード表記ですが、オンコードでなくても曲の雰囲気を壊さない場合は演奏者の自由度を上げるため普通のコード表記にします。

例えば3小節目はベースがBbなので、Eb7/Bbですが、リードシートではEb7とだけ記します。

また9小節目からのBbペダルは、1回目ベースはF-Bbと進んでいますが、2回目、後テーマではBbペダルになっているので、Bbペダルで統一します。

もちろん正確に、1回目はF-Bbで2回目以降Bbペダルと書いても構いません。

どこまで細かく記譜するかは書き手次第です。

この曲を演奏するとき、他のメンバーにどんな風に弾いて欲しいか、を基準に書いていくのがおすすめです。

Sanduのリードシート

Sanduリードシート完成楽譜
コードネームにはテンション音などはつけず、基本の4和音にしておくと、演奏者の自由度が増すのでおすすめです。ただし、原曲どおりのヴォイシングを弾いてもらいたい場合はテンションまで記譜します。

コード付けの感覚は数をこなしていくうちに身につくので、リードシート作りを続けてみてください。はじめのうちは正解が分かるように、市販されているリードシートの曲を自分で作ってみるのがおすすめです。

市販のリアルブックのコード付けと見比べて違いを研究していくことで精度が上がってきます。リアルブックは数多く出版されていますが、どのアーティストのバージョンのリードシートかまで明記されているThe New Real Bookがおすすめです。フュージョンやポップスまで掲載されているので、リードシートづくりを練習するのに最適です。

『The New Real Book, Volume 1』

リング製本: 451ページ
出版社: Sher Music Co (1988/02)
言語: 英語
『The New Real Book, Volume 2』

リング製本: 488ページ
出版社: Sher Music Co (1991/11)
言語: 英語
『The New Real Book, Volume 3』

リング製本: 436ページ
出版社: Sher Music Co (2005/6)
言語: 英語

リードシート作りには正解がありません。

自分にとって読みやすいか、相手にとって読みやすいか、バンドメンバーにどんな演奏をして欲しいかなどを基準に、自分だけのオリジナルリードシートを作ってみてください。

きっとリードシート作りの楽しさにハマるはずです。