ジャズを演奏する上で欠かせないのがスウィング。「スウィング」はジャズ特有のリズムのことで、演奏者によって自在に変化する特徴的なリズムです。
初心者にとっては捉えどころがなく難しく感じてしまうこともありますが、基本的な考え方さえ知っておけば、好きなアーティストのスウィング感を取り入れることができるようになります。
自分がカッコいいと思うスウィング感で演奏するためにも、スウィングの考え方と練習法を知っておきましょう。
8分の6拍子で捉える
現在のジャズの原型とされるビバップは、西洋音楽とアフリカのリズムを合わせて出来たものとされています。
アフリカのリズムの根底にはヘミオラに代表される「3対2」という感覚があります。その影響でビバップのリズムも、楽譜は4分の4拍子で書かれていても、8分の6拍子のリズムを感じながら演奏します。
楽譜の記譜

演奏者の意識

楽譜は西洋から伝わったクラシックの記譜法をもとにしています。その記譜法にジャズのリズムを当てはめているため、4分の4拍子で書かれていても、演奏者の意識は8分の6拍子になります。
ジャズの楽譜にはシャッフル記号が書かれることもありますが、実際に演奏するときは、シャッフル特有の跳ねるような「タータ・タータ」ではなく、8分の6拍子の「タタタ・タタタ」という感覚で演奏することが大切です。
こうして演奏されるリズムのことを「スウィング」と呼んでいます。
「楽譜は4分の4拍子でも、その根底にある3連符のリズムを感じながら演奏する」のがスウィングの本質だと覚えておいてください。
タイムフィールについて
スウィングには大きく分けて、ジャストのノリ、前ノリ、後ろノリの3種類があります。このノリのことをタイムフィールと呼びます。
4分の4拍子の1拍を円に例えたときの8分音符の長さ
ストレート | 基本のリズム | スウィング |
スウィングは1つ目の8分音符の長さを演奏者自身で選ぶことができます(灰色の部分)。つまり、スウィングには「これが正しい」という厳密な正解がないのです。
そして、これこそがスウィングの難しいところでもあり、同時に面白いところでもあります。そのためストレートに近いスウィングや3連符に近いスウィングなどが存在します。
さらに音の長さだけでなく、1つ目の8分音符の弾くタイミングを変えることで、「前ノリ」や「後ろノリ」にすることもできます。このタイミングもまた、演奏者自身が自由に選べるのです。
前ノリ | 後ろノリ![]() |
後ろノリは現在のジャズ奏者の主流です。円で見ると分かるように、ストレートを遅らせて弾いていると捉えることもできます。
カッコよく聞こえるスウィングは人それぞれ違うので、どの位置まで伸ばすとカッコよく感じるか、自分の演奏を録音して探してみてください。
カラオケ音源などを使って、ドラムとベースが出すリズムに対してどんなタイミングになるとカッコよく聴こえるか研究することが大切です。
ストレート
スウィング
前ノリ
後ろノリ
自分の求めているフィールを見つけられたら、それが身につくように練習していきましょう。
メトロノームを使った練習
スウィングを身につける練習法には、生演奏のマイナスワンや音源と一緒に演奏する方法と、メトロノームを使って練習する方法の2つがあります。
どちらの練習方法も、自分の演奏を録音して客観的に聴いて分析することが重要です。
ここではメトロノームを2・4拍に鳴らして練習してみましょう。2・4拍を意識することで1、3拍目に進む感覚を身に付けることができます。そして、この感覚こそがスウィングの推進力を生み出します。
メトロノームを2・4で鳴らしながら足で1、3拍を踏み、体で2、4拍目を感じるようにします。正確な1・3拍が身についてこその2・4拍の意識なので、はじめは4拍全てメトロノームを鳴らす練習から始めても構いません。
練習例

録音して聴き返すと、どこでリズムがずれたのかがわかります。そこを修正してまた録音。聴き返して修正を繰り返します。
はじめはメトロノームを2、4拍で捉えるのが大変かもしれませんが、練習していくうちに慣れてくるので諦めず続けてみてください。
1、3拍は足、2、4拍は体全体で感じるようなイメージで演奏できるのが理想です。
ある程度メトロノームと一緒に演奏できてくると、今度はメトロノームに頼った演奏になりがちです。
メトロノームはあくまでガイドと考え、「自分が弾いているテンポにメトロノームが合わせている」という感覚を持ちながら練習してみてください。
- Qテンポ100で4分で刻む練習をしているのですが、リズムがずれてしまいます。もたったり走ったり。
練習の積み重ね次第ではあるでしょうが、こういったリズムのずれを矯正する練習法はありませんか? - A
4分で刻むときも頭の中で3連符を鳴らしておくのが効果的です。
拍を細かく意識しておくことで、ずれやもたりが改善していくと思います。
チャーリー・パーカーをコピーする
現在活躍するジャズ奏者の誰もがコピーしてきたのがチャーリー・パーカー。スウィングを身につけるにはパーカーをコピーするのが近道です。
コピーといってもアドリブを全て弾けるようになる必要はありません。
パーカーの書く曲はメロディ自体にジャズの基礎が全て詰まっているので、メロディをコピーするだけでもスウィングが身につきます。
まずは好きな曲を1曲選んで、原曲と一緒に弾けるようになるまでひたすらコピーしてみてください。コピーできたらメトロノームに合わせて録音して聴き比べます。
ここではDexterityを弾いてみましょう。
Dexterityの1〜4小節目

聴き比べてもし何か違うと感じたら演奏方法を変えてみましょう。
ポジションの選び方やピッキングの仕方、使っているギターの音色など、スウィングに影響するものはさまざまです。これらを1つずつ検証して、目指しているスウィングに近づけてみてください。
スウィングはすぐに身につくものではありませんが、続けていれば必ず身に付きます。諦めず、年単位でじっくり取り組んでみてください。