ディジー・ガレスピー作の名曲『A Night in Tunisia』(チュニジアの夜)。この曲の魅力は、Eb7 – Dm7(bII7 – Im7)というエキゾチックな響き。
Dマイナーペンタ一発でも弾けるため、マイナーペンタをジャズらしく使う方法を研究するのに最適です。さらに、1コーラスが48小節と長いので、アドリブの組み立て方の練習にもおすすめ。
ここではリアルブックに載っているコード進行を基に、分析とアドリブ例を紹介していきます。
チュニジアの夜コード進行

コード進行分析の目的は、各コードの機能を理解し、使えるスケールを見つけ出すことです。
jazzguitarstyle.comでは以下4つの手順で紹介していきます。
- 曲のキーを調べる
- 各コードの機能を調べる
- 使えるスケールを見つけ出す
- アドリブで実際に使ってみる
チュニジアの夜のキー
キーは、調号と曲の終わりのコードを見ることで判断することができます。

チュニジアの夜の調号はフラットが1つ付いているので、キーはFメジャーかDマイナーになります。
曲の最後を見るとDm7へ向かうII – V(Em7(b5)-A7)があるので、ここではDマイナーキーが最適です。

マイナーキーの場合、3種類のマイナー(ナチュラルマイナー、ハーモニックマイナー、メロディックマイナー)からできるコードをローマ数字で覚えておくと、コード進行分析に役立ちます。
Dマイナースケールから作られるコード

Dハーモニックマイナースケールから作られるコード

Dメロディックマイナースケールから作られるコード

Eb7の役割
チュニジアの夜で特徴的なコード進行、Eb7ーDm7。ここで出てくるEb7は、Dm7に対するV7であるA7の代理コード(裏コード)です。

Eb7の3度とb7度はソとレb(ド#)。A7の3度と7度はド#とソ。このように同じ3度とb7度をもっているドミナントコードは代理することができます。
この関係を裏コードと呼びます。
Eb7の裏コードはA7。A7の裏コードはEb7になります。
II-V-Iを調べる
キー以外のコードが多く使われている曲は、II-VやV-Iを探し転調箇所を見つけておきます。
II – Vには下受け皿。V – Iには矢印を使います。裏コードが使われているV – Iは点線を使います。

[C]セクションのGmMa7はIIm7/bIIIのm7がMa7に変化したものと解釈しています。これを踏まえて曲全体を機能別(ローマ数字=度数)に置き換えましょう。
コード進行分析

※bII7はSUBV7(V7の代理)と表記することもできます。
各コードで使えるスケール

スケールの選択肢は1つではありませんが、まずは基本となるスケールの響きを覚えておくことが大切です。
度数別の使えるスケールは「コード進行から使えるスケールを見つけ出す3つの方法」のページで紹介しています。
チュニジアの夜アドリブ例
Dマイナーペンタトニックスケールを中心に、II – V – Iリックとコードトーンを使ったアドリブ例を楽譜にしたので、参考にしてみてください。








ギタリストのおすすめ音源
チュニジアの夜を取り上げているジャズギタリストのアルバムと動画一覧です。
アンドレアス・オーバーグ
軽快なテンポでの絶妙なアドリブが聴けます。
Peter Almqvist
スローテンポでのギターデュオ演奏が聴けます。コンピングは本人のオーバーダブによるものです。
アルブ・ギャリソン
アドリブはBセクションのみですが、ジャズギタリストの最古のレコーディングのひとつです。
ビリー・バウアー
ドラムレス編成での演奏。ジプシージャズスタイルのフレージングが学べます。
ルネ・トーマ
ベルギー出身のギタリスト。マイナーペンタトニックスケールを基本にしたフレージングが学べます。
ケニー・バレル
75歳のバースデイライブから。アドリブは6分41秒からはじまります。
Kenny Dorhamのアルバム『Round About Midnight』での演奏。
ジェシ・ヴァン・ルーラー
ボーカル入りのファンキーなアレンジでの演奏が聴けます。
ギラッド・ヘクセルマン
ベース、ドラムとのトリオ編成での演奏です。
パスクァーレ・グラッソ
エメット・コーエンとのライブ映像です。