ウォーキングベースを弾けるようにしておくと、3つのメリットがあります。

  1. ベースラインからコード進行を推測できる
  2. ギターだけで練習用カラオケを作れる
  3. 管楽器やボーカリストとデュオに活用できる

以前はギターデュオのコンピングにも使われていましたが、自由度を高めるため近年ではほとんど使われなくなりました。

ここではルートを使ったシンプルなウォーキングベースから、ペダルポイント、テンションを使ったものまでを紹介していきます。

ウォーキングベースのサウンド

CメジャーKeyのII-V-I(Dm7-G7-CMa7)をウォーキングベースで弾くと次のようになります。

II-V-Iをウォーキングベースで弾いた例

Dm7-G7-CMa7でのウォーキングベース例楽譜
前半はウォーキングベースのみ、後半は同じベースラインにコードとゴーストノート(開放弦へのプリング)を加えた例です。コードヴォイシングに決まりはありませんが、コードを特徴づける3度と7度がよく使われます。

弾弦にはピックを使わず、右手の親指でベースライン、残り3本(人差し指、中指、薬指)でコードを弾きます。

コードのリズムに変化をつけた例

Dm7-G7-CMa7でのウォーキングベースのコードのリズムを変えた楽譜

ウォーキングベースの役割と分析

ウォーキングベースの各拍には基本の役割があります。

  • 1拍目・・・ルート
  • 2拍目・・・コードトーンまたは3拍目へのアプローチ音
  • 3拍目・・・コードトーン
  • 4拍目・・・コードトーンまたは次の小節へのアプローチ音

これをもとにウォーキングベースを作っていきます。まずは必須材料となる各コードのコードトーンを覚えましょう。

Dm7のコードトーン
Dm7のコードトーン楽譜
G7のコードトーン
G7のコードトーン楽譜
CMa7のコードトーン
CMa7のコードトーン楽譜

ベースラインに使う6~3弦の指板上の配置は以下のとおりです。

Dm7コードトーンダイアグラム
Dmi7コードトーン、ギターネック上の配置
G7コードトーンダイアグラム
G7コードトーン、ギターネック上の配置
CMa7コードトーンダイアグラム
CMa7lコードトーン、ギターネック上の配置

各拍の役割とコードトーンを覚えたら譜例1の各音を分析してみましょう。アプローチノートはANと表記します。

Dn7-G7-CMa7ウォーキングベース分析楽譜

6小節目の3~4拍目はG7の裏コードDb7のコードトーンです。裏コードはウォーキングベースでもよく使われる手法です。

Db7のコードトーン
Db7のコードトーン楽譜
Db7コードトーン
Db7コードトーン、ギターネック上の配置

ウォーキングベースを弾くための6ステップ

ウォーキングベースの各拍の役割を覚えて分析できるようになったら実際に作っていきましょう。まずは基本となるルート弾きからです。

ルートを弾く

ウォーミングアップもかねてルートを弾いてみましょう。指弾きに慣れるためにも、ベース音のピッキングは全て親指を使ってみてください。

ルート音のみ

Dm7-G7-CMa7のウォーキングベースをルートのみで弾いた楽譜

音源はメトロノームを2、4拍に鳴らしていますが、ドラムの打ち込みなどを使っても構いません。正確なリズムで弾けるようにするのが目標です。ルート弾きに慣れてきたら、1拍目裏に各コードの3度と7度を加えてみましょう。

コードを加えた演奏

Dm7-G7-CMa7のウォーキングベースルート音弾きにコードを追加した楽譜

次はテンションコードを使ってみましょう。ここではベースライン内で弾きやすいテンションコードを選んでいます。

テンションコードを加えた演奏

Dm7-G7-CMa7のウォーキングベースルート音弾きにテンションコードを追加した楽譜

ベースラインはルートのオクターブ上を混ぜることもできます。

Dm7-G7-CMa7のウォーキングベースルート音にオクターブを加えた楽譜

ここに3度と7度を加えてみましょう。

Dm7-G7-CMa7のウォーキングベースルート+オクターブに3度と7度を加えた楽譜

ベースのルート弾きがウォーキングベースの初歩になります。これに慣れたら少しずつ音を加えていきましょう。

5度を弾く

ルートの次によく使われるのが5度です。ここではルートと5度の組み合わせを弾いていきます。

Dm7-G7-CMa7のウォーキングベースルート+5度楽譜

コードは3度と7度を2拍目裏と3拍目裏に入れてみます。

Dm7-G7-CMa7のウォーキングベースルート+5度に3度と7度を追加した楽譜

5度とルートのオクターブ上を組み合わせることもできます。

Dm7-G7-CMa7のウォーキングベースルート+5度にオクターブを組み合わせた楽譜

1、2、3拍目裏の中から好きなリズムを選んでコードを入れてみてください。

Dm7-G7-CMa7のウォーキングベースルート+5度+オクターブにコードを追加した楽譜

ルートと5度の響きに慣れたら、アプローチノートを加えていきましょう。

4拍目にアプローチノート

アプローチノートはコードトーンを使う方法と、半音を使う方法の2つがあります。まずは次のコードのルートに一番近いコードトーンを使ってアプローチしていきます。

コードトーンを使ったアプローチ

Dm7-G7-CMa7のウォーキングベースの4拍目にアプローチノートを加えた楽譜

ウォーキングベースにテンションコードを加えてみましょう。

コードトーンを使ったアプローチにテンションコードを加えた例

Dm7-G7-CMa7のウォーキングベース+アプローチノートにコードを加えた楽譜

ベースラインに5度とオクターブを加えてます。

Dm7-G7-CMa7のウォーキングベース+アプローチノートに5度とオクターブ組み合わせた楽譜

コードを加えてみましょう。ここではゴーストノートも入れてサウンドに変化をつけます。

Dm7-G7-CMa7のウォーキングベース+アプローチノート+5度+オクターブにコードを加えた楽譜

組み合わせは自由なので、いろいろなパターンを試してみてください。コードトーンを使ったアプローチに慣れてきたら、半音アプローチを使ってみましょう。半音上、下どちらからでもアプローチできます。

半音アプローチ

Dm7-G7-CMa7のウォーキングベースに半音アプローチを加えた楽譜

半音アプローチにコードを入れる場合、コードも次の小節へ半音アプローチすることができます。ここではスライドを使って弾いてみましょう。

Dm7-G7-CMa7のウォーキングベース+半音アプローチにコードを加えた楽譜

スライドを使うときはベース音もスライドするのが簡単です。ただリズムが崩れやすいので注意しながら弾いてみてください。

ベースラインに5度とオクターブを組み合わせてみましょう。

Dm7-G7-CMa7のウォーキングベース+半音アプローチに5度とオクターブを加えた楽譜

コードは今までの入れ方の中から自由に選んで弾いてみます。

Dm7-G7-CMa7のウォーキングベース+半音アプローチ+5度+オクターブにコードを加えた楽譜

半音アプローチを使うとジャズらしい雰囲気を出すことができます。次は2拍目にもアプローチノートを使ってみます。

2拍目にアプローチノート

2拍目のアプローチノートも、コードトーンを使ったものと半音を使ったものがあります。それぞれどんな響きになるか聴いてみましょう。

2拍目にコードトーンアプローチ

Dm7-G7-CMa7のウォーキングベースの2拍目にコードトーンアプローチを加えた楽譜

コードは1拍目裏、3拍目表、スライドを組み合わせて弾いてみます。

Dm7-G7-CMa7のウォーキングベースの2拍目コードトーンアプローチにコードを加えた楽譜

2拍目に半音アプローチ

Dm7-G7-CMa7のウォーキングベースの2拍目に半音アプローチを加えた楽譜

コードはスライドを使って入れてみます。

Dm7-G7-CMa7のウォーキングベースの2拍目半音アプローチにコードを加えた楽譜

2拍目のアプローチは3拍目がルート以外の場合でも使えます。3拍目が3度と5度の場合を弾いてみましょう。

3拍目が3度の場合

Dm7-G7-CMa7のウォーキングベースの3拍目が3度へのアプローチノート楽譜

3拍目が3度にコードを加えた例

Dm7-G7-CMa7のウォーキングベースの3拍目が3度へのアプローチノートにコードを加えた楽譜

3拍目が5度の場合

Dm7-G7-CMa7のウォーキングベースの3拍目が5度へのアプローチノート楽譜

3拍目が5度にコードを入れた例

Dm7-G7-CMa7のウォーキングベースの3拍目が5度へのアプローチノートにコードを加えた楽譜

5小節目の3拍目からのように、ベースラインに合わせて1拍ごとにコードを弾くこともできます。

1拍目をルート以外にする

今までは基本の役割どおり、1拍目をルートで弾いてきましたが、他のコードトーンにすることもできます。3度と5度の場合を弾いてみましょう。

1拍目を3度と5度

Dm7-G7-CMa7のウォーキングベース1拍目に3度と5度を使った楽譜

ルート以外の音を1拍目に使う場合は、自分の中でルートを感じながら演奏することが大切です。コードを加えた響きを覚えることも大切なので、ここでは分かりやすいように半拍アンティシペーションさせて弾いてみます。

コードをアンティシペーションさせて弾いた例

Dm7-G7-CMa7のウォーキングベース1拍目に3度と5度にコードを加えた楽譜

テンションを使う

テンションを加えることでサウンドに広がりができ、自由度も増します。各コードのテンションを確認しておきましょう。

Dm7のテンション
Dm7のテンション楽譜
G7のテンション
G7のテンション楽譜
CMa7のテンション
CMa7のテンション楽譜

テンションを加えたウォーキングベースライン

Dm7-G7-CMa7のウォーキングベースにテンションを加えた楽譜

コードを組み合わせた例

Dm7-G7-CMa7のウォーキングベース+テンションにコードを加えた楽譜

テンションを1拍目にもってくることもできます。

テンションを1拍目に持ってきたウォーキングベースライン

Dm7-G7-CMa7のウォーキングベースの1拍目をテンションにした楽譜

テンションを1拍目に持ってくるとコードの印象も変わります。ここでは白玉を使って弾いてみます。

Dm7-G7-CMa7のウォーキングベースの1拍目テンションにコードを加えた楽

ルート以外のコードトーンを1拍目にしたときと同様に、コードのルートをしっかり意識しながら演奏することが大切です。

ペダルを使ったベースライン

ジャズではペダルを使ったベースラインもよく使われます。Dm7、G7、CMa7それぞれに共通する音を選んでペダルさせてみましょう。

Dペダル

Dm7-G7-CMa7にDペダルのベースを加えた楽譜

Gペダル

Dm7-G7-CMa7にGペダルのベースを加えた楽譜

Aペダル

Dm7-G7-CMa7にAペダルのベースを加えた楽譜

Aペダルはバリエーションとして半音下がるラインもよく使われます。

A-Ab-G

Dm7-G7-CMa7にAペダルから下降するベースを加えた楽譜

ベースのペダルはイントロでよく使われますが、アドリブ中でも雰囲気を変えるために使うことがあります。いろいろなペダル音を試してみて、何度の音がかっこよく聴こえるか研究してみてください。

ウォーキングベースを使って弾くジャズブルース

II-V-Iでのウォーキングベースに慣れてきたらいろいろな曲で使えるようにしましょう。ここではキーBbのジャズブルースでの練習例を紹介します。まずはベースラインから。

キーBbのジャズブルースでのウォーキングベース楽譜

慣れてきたらリズム1を使ってコードを加えます。以下の譜面にはゴーストノートを指定していませんが、好きなタイミングで入れてみてください。

リズム1
1拍目ウラにコードを入れるリズム楽譜

BPM=130での演奏例

キーBbのジャズブルースのウォーキングベースにリズム1のコードを加えた楽譜

次は1小節にコードが2個あるところ(4、8、11、12小節目)にリズム2を加えてみましょう。

リズム2
1拍目ウラと3拍目アタマにコードを入れるリズム楽譜

キーBbのジャズブルースのウォーキングベースにリズム2のコードを加えた楽譜

最後にBPM=190での演奏例を紹介します。

キーBbのジャズブルースのウォーキングベースに自由にコードを加えた楽譜

はじめのうちはメトロノームと合わせて弾いて、慣れてきたら自分のギターだけでテンポがキープできるように練習してみてください。自分の演奏を録音して客観的に聴くのも効果的です。

おすすめギタリスト

ウォーキングベースを前面に押し出した演奏をするギタリストは少ないですが、現役ではマーティン・テイラーとタック・アンドレスがおすすめです。

マーティン・テイラーのI Got Rhythm

マーティン・テイラーのDVDではスタンダードを題材にソロギターのアイデアが学べます。

『Martin Taylor Fingerstyle Jazz Guitar』

2005年4月発売

タック・アンドレスのウォーキングベース

タック・アンドレスのDVDではKey=Gのブルース進行を例に、ウォーキングベース奏法を基礎から学べます。

『Fingerstyle Mastery』

2005年11月発売
コメント一覧
  1. テルさん より:

    以前より楽しく拝見させて頂いております。
    どれも大変勉強になりますが冒頭の方のG7のコードトーンの配置図はコピぺミスかと思われますのでコメントさせて頂きました。これからも色々なレッスン楽しみにしております。

    • jazzguitarstyle.com より:

      テルさん、ご指摘ありがとうございます。
      混乱させて申し訳ありません。修正させて頂きました。

  2. 橋本 より:

    質問失礼いたします。
    プリングで開放弦を入れてゴーストノートを入れる部分ですが、
    開放弦の音がキー以外の音やアボイドノートの時にも名取さんは使っていますか?
    音源を聴くと開放弦の音は譜面で書かれている8分音符より短く、
    あくまでゴーストノートという感じなので、個人的には階名的には外れている場合でも
    ニュアンス的に使えそうだと思っているのですが。。。
    アドバイスいただければ幸いです。
    よろしくお願いいたします。

    • jazz guitar style master より:

      はい。開放弦の音がキー以外の音やアボイドノートの時でも気にせずがんがん使っています。

      • はしもと より:

        返信ありがとうございます。やっぱりそうなのですね!スッキリしました。

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