IIIm7コードにおけるb9の正しい使い方

質問内容
IIIm7コードにおけるb9の扱いが、テンションとフリジアンスケールで矛盾していませんか?
コードのテンションとしてはアボイドとされる一方で、フリジアンスケールでは特徴音となっています。
「コード+テンション=スケール」と考えると、この二つの扱いが矛盾すると思うのですが、b9はどのように使えば良いのでしょうか。
目次

装飾音として使います

ジャズ理論における「テンション」は、「エクステンション(拡張)」の略です。ルートから3度積みした基本の4和音の上に、さらに3度積みしてできる音(9、11、13)の総称を指します。

「コード+テンション=スケール」の「テンション」の中には以下の2種類が存在します。

  • アヴェイラブル・テンション: コードに乗せて長く伸ばせる音
  • アボイドノート: 長く伸ばすと不協和音になる音

b9は「テンション」というグループに含まれますが、扱い方としては「アボイドノート」に分類されます。

まずは、以下の3つを理解しておいてください。

b9の扱い方
  1. 長く鳴らすと不協和音になる
  2. スケールでは「装飾音」にする
  3. コードでは「目的」で使い分ける

それぞれの具体例をみていきましょう。

長く鳴らすと不協和音になる

IIIm7コードで使うb9は、長く鳴らすとフレーズであっても、不協和音になります。

Em7コードの上でF音(b9)を長く鳴らした例を聴いてみてください。

Em7コードでb9(F音)を使った楽譜

これが、コードでアボイドになる理由です。

では、スケールで特徴音となるのは何故なのか、フレーズを例に検証していきます。

フレーズでの実例

b9(F音)をフレーズに活かすには、長く伸ばさずに「装飾音(アプローチノート)」として使います。

まずは、基本となる「Eマイナーペンタトニックスケール」を使ったフレーズを聴いてください。

Eマイナーペンタトニックスケールフレーズ楽譜

次に、このフレーズをベースにし、b9(F音)を装飾的に織り交ぜてみます。

b9を装飾音として使ったEm7でのフレージング楽譜

b9が加わることで、フリジアン特有の響きになるのが分かると思います。b9が「特徴音」と言われるのはこれが理由です。

コードでの実例

IIIm7コードのb9が「アボイドノート」とされる理由は、IIIm7の響きを損なってしまうためです。

次のコード進行で確認してみましょう。5つ目のEm7に注目してください。

I-VI-II-V-III-VI-II-Vコード進行楽譜

次は、Em7でb9を使った場合の響きです。

Em7でb9を使った例

IIIm7でb9thを使ったコード進行楽譜

このように、Em7(IIIm7としての機能)を求める場面でb9を鳴らすと、響きが濁ってしまいます。そのため、IIIm7コードのb9はアボイドとされているのです。

ただし、トップノートに装飾音として入れれば、自然に響かせることもできます。

b9を装飾音として使った例

Em7で装飾音としてb9thを入れたコード進行楽譜

スケールと同じように、コードでも装飾音として使えばアボイドノートでも自由に使うことができます。

フリジアンコードの実例

IIIm7ではなく、フリジアンコードとして響かせたい場合はボイシングに工夫が必要です。

よく使われるのは、アボイドノートが含まれているメジャートライアド。

キーCのEm7の場合、b9のFが入っているのはFメジャートライアドなので、F/Eにするとフリジアンの響きになります。

実践では、FonEとGonEを交互に行き来するような進行がよく使われます。

FonEを使ったフリジアンコードの例

FonE、GonEの楽譜

オンコードの応用で、FトライアドにMa7と#11を加えると、よりジャズらしい響きになります。

FMa7(#11)/Eのボイシング例

FMa7(#11)/Eボイシング楽譜

このように、通常のEm7としてではなく、Eフリジアン固有の響きを狙ったボイシングであれば、b9を美しく響かせることができます。

IIIm7におけるb9の扱い方まとめ

「コードのテンション」と「スケールの特徴音」の扱いは、以下のように整理してみてください。

b9の扱い方まとめ
  1. 長く鳴らすと不協和音になる: b9(F音)は、コードで使う場合はもちろん、フレーズであっても、長く伸ばすと不協和音になります。
  2. 装飾音として使う: コードのトップノートやアドリブで使う場合は、長く伸ばさず、アプローチノートとして鳴らし、次に解決音へすすむのが最適解です。
  3. コードでは「目的」で使い分ける: IIIm7では響きを損なうためアボイドとされますが、フリジアンの響きを狙う場合は「専用のボイシング(オンコード等)」を使うことで活用できます。

音楽理論の「アボイド」は、「弾いてはいけない音」ではなく、「長く鳴らすとコードの響きを損なう音」を指しています。

扱い方を理解すれば、b9を自由に取り入れることができるので、ぜひ演奏に取り入れてみてください。