ナチュラルマイナースケールから出来るコードで使えるテンションは以下の通りです。

コード使えるテンション注意が必要な音
Im79th、11thb13th
IIm7(b5)11th、b13thb9th
bIIIMa79th、13th11th
IVm79th、11th、13thなし
Vm711thb9th、b13th
bVIm79th、#11th、13thなし
bVII79th、b13th11th

この表をそのまま覚えるのではなく、実際にテンションの音を聴いて耳で覚えることが大切です。

ここではキーCマイナーを例に各テンションがどんな響きなのかを紹介していきます。

テンションとは
テンション(Tension)はエクステンション(Extension)の略で拡張という意味。
コードのルート音の1オクターブ上に積み上げられる音を総称してテンション(拡張した音)と呼びます。
テンションは元のコードを洗練された響きにする音と、響きを害してしまう音(注意が必要な音)に分けられます。

マイナーキーのテンションの作り方

ナチュラルマイナースケールから作るダイアトニックコードの種類と機能ではオクターブ内で音を積み上げましたが、テンションはオクターブより上の音になります。

Cナチュラルマイナースケール
Cナチュラルマイナースケール楽譜

R(ルート)を基準にして1つおきに積み上げて出来るCm7
Cナチュラルマイナースケールから作られるCm7楽譜

ここからさらに積み上げるとテンションが出てきます。

Cm7からさらに音を積み上げて出来るCm9コード
Cナチュラルマイナースケールから作られるCm9楽譜

各コードのテンションがどんな響きなのか、1音ずつ確認していきましょう。

Im7で使えるテンション

Im7に音を積み上げると、9、11、b13が出てきます。
Cm7に積み上げられるテンション楽譜

各テンションをコード進行の中で弾くことで、使えるか使えないかの判断ができます。ここではDm7(b5)-Gm7-Cm7を使って弾いてみましょう。

もとになるコード進行 Dm7(b5)-Gm7-Cm7

Dm7(b5)-Gm7-Cm7楽譜

Dm7(b5)とGm7はそのまま、Cm7にテンションを加えていきます。

Cm7+9(D音)=Cm9

Dm7(b5)-Gm7-Cm9楽譜
Im7の安定した響きが変わらないので、9はIm7のテンションとして使えます。

Cm7+11(F音)=Cm7(11)

Dm7(b5)-Gm7-Cm7(11)楽譜

9同様、安定感のある響きになっているので、11もテンションとして使えます。

またテンションは組み合わせることも可能です。9、11を合わせた響きを聴いてみましょう。

Cm7+9(D音)+11(F音)=Cm11

Dm7(b5)-Gm7-Cm11楽譜

Cm7+b13(Ab音)=Cm7(b13)

Dm7(b5)-Gm7-Cm7(b13)楽譜
9、11と比べると不安定な響きになっています。b13はIm7の安定する機能を損なわせてしまうので、テンションとしては使えません。

Im7で使えるテンション
9、11

IIm7(b5)で使えるテンション

IIm7(b5)に音を積み上げるとb9、11、b13が出てきます。
IIm7に積み上げられるテンション

Dm7(b5)-Gm7-Cm7を例に各テンションの響きを聴いてみましょう。

Dm7(b5)+b9(Eb音)=Dm7(b5,b9)

Dm7(b5,b9)-Gm7-Cm7楽譜
Dm7(b5)にb9を加えると、ルート以外の音がFm7の構成音になるため、Fm7/Dの響きになります。

Dm7(b5)の響きが薄れてしまうので、b9はテンションとしては使われません。ただしコードの動きの中ではよく使われる音です。

動きの中でb9を使った例

Dm7(b5)にb9を動きとして加えた楽譜

Dm7(b5)のb9は動きの中で使える音として覚えておくのがおすすめです。

Dm7(b5)+11(G音)=Dm7(b5,11)

Dm7(b5,11)-Gm7-Cm7楽譜

Dm7(b5)の響きを損なわないので11はテンションとして使えます。

Dm7(b5)+b13(Bb音)=Dm7(b5,b13)

Dm7(b5,b13)-Gm7-Cm7楽譜
11同様、コードの響きを害さないのでb13もテンションとして使えます。

11と合わせたサウンドを聴いてみましょう。

Dm7(b5)+11(G音)+b13(Bb音)=Dm7(b5,11,b13)

Dm7(b5,11,b13)-Gm7-Cm7楽譜

IIm7(b5)で使えるテンション
11、b13

bIIIMa7で使えるテンション

bIIIMa7に音を積み上げると、9、11、13が出てきます。
EbMa7に積み上げられるテンション楽譜

ここではDm7(b5)-Gm7-EbM7を例に各テンションのサウンドを聴いてみましょう。

もとになるコード進行 Dm7(b5)-Gm7-EbMa7

Dm7(b5)-Gm7-EbMa7楽譜

EbM7+9(F音)=EbM9

Dm7(b5)-Gm7-EbMa9楽譜

bIIIMa7の響きを害さないので9はテンションとして使えます。

EbM7+11(Ab音)=EbM7(11)

Dm7(b5)-Gm7-EbMa7(11)楽譜

9とは違い不協和な響きになるため、11はテンションとしては使えません。

EbM7+13(C音)=EbM7(13)

Dm7(b5)-Gm7-EbMa7(13)楽譜

9同様、自然な響きになることから13はテンションとして使えます。

EbM7+9(F音)+13(C音)=EbM13

Dm7(b5)-Gm7-EbMa13楽譜

13は7の音が入っていないと6として扱われます。6はルートのオクターブ内の音なのでテンションとは呼びませんが、ジャズでは良く使われるコードなので響きを覚えておきましょう。

Eb+6(C音)=Eb6

Dm7(b5)-Gm7-Eb6楽譜

Eb6にテンションの9を加えることもできます。

Eb6+9(F音)=Eb6(9)

Dm7(b5)-Gm7-Eb6(9)楽譜
6(9)コードはボサノヴァで良く使われるコードです。

bIIIMa7で使えるテンション
9、13

IVm7で使えるテンション

Fm7に音を積み上げていくと9、11、13が出てきます。
Fm7に積み上げられるテンション楽譜
ここではFm7-Gm7-Cm7を例に各テンションの響きを聴いてみましょう。

もとになるコード進行 Fm7-Gm7-Cm7

Fm7-Gm7-Cm7楽譜
Fm7+9(G音)=Fm9

Fm9-Gm7-Cm7楽譜
Fm7の響きを害していないので、9はテンションとして使えます。

Fm7+11(Bb音)=Fm7(11)

Fm7(11)-Gm7-Cm7楽譜
9同様、自然な響きなので11もテンションとして使えます。

Fm7+13(D音)=Fm7(13)

Fm7(13)-Gm7-Cm7楽譜
Fm7のAb音とD音がトライトーンの響きなので、9、11と比べると不協和な響きなので、ヴォイシングに注意が必要です。

また7度の音が含まれない場合、6として扱います。

Fm+6(D音)=Fm6

Fm6-Gm7-Cm7楽譜
9を加えることもできます。

Fm6+9(G音)=Fm6(9)

Fm6(9)-Gm7-Cm7楽譜
さらに11を加えることもできます。

Fm6(9)+11(Bb音)=Fm6(9,11)

Fm6(9,11)-Gm7-Cm7楽譜

Fm7に戻ってテンションの組み合わせを聴いてみましょう。

Fm7+9(G音)+11(Bb音)=Fm11

Fm11-Gm7-Cm7楽譜

Fm7+9(G音)+13(D音)=Fm9(13)

Fm9(13)-Gm7-Cm7楽譜

Fm7+11(Bb音)+13(D音)=Fm7(11,13)

Fm7(11,13)-Gm7-Cm7楽譜

Fm7+9(G音)+11(Bb音)+13(D音)=Fm13

Fm13-Gm7-Cm7楽譜

ギターでテンションの入った音を弾くときは、5度やルートを省略します。そのため、コードネームが違っても押さえ方が同じフォームが出てくるのが特徴です。

Fm6(9)=Bb7(13)、Fm13=EbMa7など。

IVm7で使えるテンション
9、11、13

Vm7で使えるテンション

Vm7に音を積み上げるとb9、11、b13が出てきます。
Gm7に積み上げられるテンション楽譜
ここではDm7(b5)-Gm7-Cm7を例に各テンションのサウンドを聴いてみましょう。

もとになるコード進行 Dm7(b5)-Gm7-Cm7

Dm7(b5)-Gm7-Cm7楽譜

Gm7+b9(Ab音)=Gm7(b9)

Dm7(b5)-Gm7(b9)-Cm7楽譜
Gm7が不協和響きになるため、b9はテンションとして使えません。

Gm7+11(C音)=Gm7(11)

Dm7(b5)-Gm7(11)-Cm7楽譜
自然な響きなので、11はテンションとして使えます。

Gm7+b13(Eb音)=Gm7(b13)

Dm7(b5)-Gm7(b13)-Cm7楽譜
Gm7にEbを加えると、Eb/Gの響きに聴こえてしまうためテンションとしては使われません。

Vm7で使えるテンション
11

bVIMa7で使えるテンション

bVIMa7に音を積み上げると9、#11、13が出てきます。
AbMa7に積み上げられるテンション楽譜ここではAbMa7-Gm7-Cm7を例に各テンションの響きを聴いてみましょう。

もとになるコード進行 AbMa7-Gm7-Cm7

AbMa7-Gm7-Cm7楽譜
AbM7+9(Bb音)=AbM9

AbMa9-Gm7-Cm7楽譜
AbMa7の響きを害していないので、9はテンションとして使えます。

AbM7+#11(D音)=AbM7(#11)

AbMa7(#11)-Gm7-Cm7楽譜
特徴的な響きですが、不協和ではないので、#11もテンションとして使えます。

AbM7+13(F音)=AbM7(13)

AbMa7(13)-Gm7-Cm7楽譜
13も自然な響きなので、テンションとして使えます。

13は7度の音が入っていないときは、6として扱います。

Ab+6(F音)=Ab6

Ab6-Gm7-Cm7楽譜
9を加えることもできます。

Ab6+9(Bb音)=Ab6(9)

Ab6(9)-Gm7-Cm7楽譜
さらに#11を加えることも可能。

Ab6(9)+#11(D音)=Ab6(9,#11)

Ab6(9,#11)Ma7-Gm7-Cm7楽譜

AbM7に戻って、テンションを組み合わせて弾いてみましょう。

AbM7+9(Bb音)+#11(D音)=AbM9(#11)

AbMa9(#11)-Gm7-Cm7楽譜

AbM7+9(Bb音)+13(F音)=AbM9(13)

AbMa9(13)-Gm7-Cm7楽譜

AbM7+#11(D音)+13(F音)=AbM7(#11,13)

AbMa7(#11,13)-Gm7-Cm7楽譜

AbM7+9(Bb音)+#11(D音)+13(F音)=AbM13(#11)

AbMa13(#11)-Gm7-Cm7楽譜

bVIMa7で使えるテンション
9、#11、13

bVII7で使えるテンション

bVII7に音を積み上げると9、11、13が出てきます。
Bb7に積み上げられるテンション楽譜
ここではBb7-Gm7-Cm7を例に各テンションのサウンドを聴いてみましょう。

もとになるコード進行 Bb7-Gm7-Cm7

Bb7-Gm7-Cm7楽譜
Bb7+9(C音)=Bb9

Bb9-Gm7-Cm7楽譜
自然な響きなので9はテンションとして使えます。

Bb7+11(Eb音)=Bb7(11)

Bb7(11)-Gm7-Cm7楽譜
不協和な響きになってしまうので、11はテンションとしては使えません。

Bb7+13(G音)=Bb7(13)

Bb7(13)-Gm7-Cm7楽譜
自然な響きなので13はテンションとして使えます。9と組み合わせて弾いてみましょう。

Bb7+9(C音)+13(G音)=Bb13

Bb13-Gm7-Cm7楽譜

bVII7で使えるテンション
9、13

sus4

11はテンションとしては使えませんが、3と置き換えることでsus4として使えます。

Bb7(no3)+4(Eb音)=Bb7sus4

Bb7sus4-Gm7-Cm7楽譜
bVII7同様に9と13をテンションとして加えることができます。

Bb7sus4+9(C音)=Bb9sus4

Bb9sus4-Gm7-Cm7楽譜

Bb9sus4+13(G音)=Bb13sus4

Bb13sus4-Gm7-Cm7楽譜

bVII7sus4で使えるテンション
9、13

ナチュラルマイナースケールから出来るコードで使えるテンションまとめ

再度使えるテンション表を紹介します。

コード使えるテンション注意が必要な音
Im79th、11thb13th
IIm7(b5)11th、b13thb9th
bIIIMa79th、13th11th
IVm79th、11th、13thなし
Vm711thb9th、b13th
bVIm79th、#11th、13thなし
bVII79th、b13th11th

音を聴いてからこの表をみると、頭の中でその響きのイメージができるはずです。

理論はそのまま覚えるのではなく、音を聴いて自分の耳を頼りに覚えていくことを心がけてみてください。

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