ペンタトニック(5音)スケールは覚えやすく使いやすいため、ギターで最初に覚えるスケールとしても有名です。
ペンタトニックスケールにはいくつか種類がありますが、ここではマイナーペンタトニックスケールに焦点をあて、ジャズで使われる「アウト」(あえてコードから外れた音を使うテクニック)を紹介していきます。
ペンタトニックスケールの基本の使い方は、マイナーペンタトニックスケールの響きをアドリブしながら覚える方法で解説しています。先にペンタトニックスケールの「インサイド」(コードに合った音)の響を覚えておくと、アウトの効果がより実感できます。
アウトを覚えると表現の幅が大きく広がるので、ぜひアドリブに取りれてみてください。
m7コード上で使えるスケール

Dm7が続くコード進行でよく使われるスケールは、Dドリアンスケール、Dメロディックマイナースケール、D、A、Eマイナーペンタトニックスケールなどがあります。
まずはそれぞれのサウンドを聴いてみましょう。ここでは5フレット付近で弾けるポジションを紹介します。
Dドリアンスケール
Dメロディックマイナースケール
Dマイナーペンタトニックスケール
Aマイナーペンタトニックスケール
Eマイナーペンタトニックスケール
各スケール音がDm7に対して何度の音になっているのかを意識しながら弾くのがおすすめです。
アウトの基本
「アウト」とは、元になるコードから外れた音を弾いて、意図的に緊張感を生み出す演奏手法です。
Dm7で使えるスケール以外の音を弾くことでアウトすることができます。まずはDm7で使えるスケールの音を全て並べてみましょう。
Dm7で使える音
上記以外の音がアウトする音になります。
Dm7でアウトする音
アウトする音を弾くとどうなるか聴いてみましょう。
アウト音はそのまま弾くだけでは音楽的ではありません。
インの音である使えるスケールと組み合わせることで効果を発揮します。
またアウト音をバラバラに使うのではなく、それらの音を含む特定のスケールとして捉えることで、フレーズが作りやすく演奏もしやすくなります。
Dm7でアウトする音はEbマイナーペンタトニックスケールに含まれているので、ここからはマイナーペンタトニックスケールを組み合わせてアウトさせる方法を見ていきましょう。
DマイナーペンタトニックスケールとEbマイナーペンタトニックスケール
Dm7に対してのEbマイナーペンタトニックスケールの度数
まずはDマイナーペンタトニックスケールとEbマイナーペンタトニックスケールを弾き分けてみましょう。
DマイナーペンタトニックスケールとEbマイナーペンタトニックスケールを2小節ごとに弾き分ける

響きに慣れてきたら、2つのスケールをスムーズにつなげる練習です。
スケールの最後の音から、一番近い次のスケールの音へつなげていきます。この練習は指板上の音の配置を覚えるのにも役立ちます。
ペンタトニックスケールをスムーズにつなげる練習

2小節ごとに慣れてきたら1小節で弾き分けてみましょう。

さらに短く2拍単位です。

最後に1拍単位でも弾いてみましょう。
4小節目と6小節目はループしてしまうのを避けるため音使いを変えています。

スケールの切り替えとサウンドに慣れてきたら、簡単なモチーフ(短いメロディの断片)を使って練習します。ここでは4音のモチーフを使ってみましょう。

モチーフに慣れてきたらリズムを変えてみましょう。
ここでは3連符を使います。

モチーフとリズムに慣れてきたら、自由に組み合わせてアドリブしてみましょう。

使えるペンタトニックスケールの半音上のペンタトニックスケールを使ってアウトするのは王道の手法です。
AマイナーペンタトニックスケールとBbマイナーペンタトニックスケール
Dm7に対してのBbマイナーペンタトニックスケールの度数。
練習方法は今までと同じです。「スケールの使い分け→スムーズな接続→モチーフ練習→リズムアレンジ→アドリブ」の順番で練習していきましょう。
AマイナーペンタトニックスケールとBbマイナーペンタトニックスケールを2小節ごとに弾き分ける

Bbマイナーペンタトニックスケールにスムーズにつなげる練習

1小節ごとに弾き分ける

2拍単位で弾き分ける

1拍単位で弾き分ける
(6小節目と8小節目はループしてしまうのを避けるため音使いを変えています)

モチーフを使った練習(ここでは3音モチーフを使っています)

異弦同フレットの運指は2本の場合はセーハを使って弾きますが、3本の場合ミュートが難しいので、各指で押さえるのがおすすめです。
モチーフを3連符で弾く練習

アドリブ例

EマイナーペンタトニックスケールとFマイナーペンタトニックスケール
Dm7に対してのFマイナーペンタトニックスケールの度数
EマイナーペンタトニックスケールとFマイナーペンタトニックスケールを2小節ごとに弾き分ける

スムーズにつなげる練習

1小節ごとに弾き分ける

2拍単位で弾き分ける
(4小節目と7小節目はループしてしまうのを避けるため音使いを変えています)

1拍単位で弾き分ける
(6小節目はループしてしまうのを避けるため音使いを変えています)

モチーフを使った練習

モチーフを3連符で弾く練習

アドリブ例

以上が、半音上のスケールを使ったアウトの基本的なアプローチです。
この3つの組み合わせの中から、気に入った響きがするものを重点的に練習してみてください。
ここでは1つのポジションで紹介していますが、慣れてきたら他のポジションでも練習して、最終的には指板全体を使ってアドリブできるようになるのが理想です。
DマイナーペンタトニックスケールとC#マイナーペンタトニックスケール
半音上のスケールを使う方法に次いでおすすめなのが「半音下のスケール」を使う方法です。
まずはDマイナーペンタトニックスケールを基本として、半音下のC#マイナーペンタトニックスケールを使ってみましょう。
練習方法は今まで同様、弾き分ける→つなげる→モチーフを使う→リズムを変える→アドリブする、という順番です。
Dm7に対するC#マイナーペンタトニックスケールの度数
DマイナーペンタトニックスケールとC#マイナーペンタトニックスケールを2小節ごとに弾き分ける

ペンタトニックスケールをスムーズにつなげる練習

1小節ごとに弾き分ける

2拍単位で弾き分ける

1拍単位で弾き分ける
(4小節目と6小節目はループしてしまうのを避けるため音使いを変えています)

モチーフを使った練習

モチーフを3連符で弾く練習

アドリブ例

半音上のスケールを使った時とはまた違った、独特の緊張感を演出できるのが半音下のアプローチの特徴です。
AマイナーペンタトニックスケールとG#マイナーペンタトニックスケール
Dm7に対してのG#マイナーペンタトニックスケールの度数
AマイナーペンタトニックスケールとG#マイナーペンタトニックスケールの弾き分け練習

ペンタトニックスケールをスムーズにつなげる練習

1小節ごとの弾き分け練習

2拍単位での弾き分け練習
(4小節目と7小節目はループしてしまうのを避けるため音使いを変えています)

1拍単位での弾き分け練習
(4小節目はループしてしまうのを避けるため音使いを変えています)

モチーフを使った練習

モチーフを3連符で弾く練習

アドリブ例

EマイナーペンタトニックスケールとEbマイナーペンタトニックスケール
Dm7に対してのEbマイナーペンタトニックスケールの度数
EマイナーペンタトニックスケールとEbマイナーペンタトニックスケールを2小節ごとに弾き分ける

ペンタトニックスケールをスムーズにつなげる練習

1小節ごとに弾き分ける練習

2拍単位で弾き分ける練習

1拍単位で弾き分ける練習
(4小節目と8小節目はループしてしまうのを避けるため音使いを変えています)

モチーフを使った練習

モチーフを3連符で弾く練習

アドリブ例

半音下のアプローチも、3つの組み合わせの中から気に入ったものを選んで練習するのがおすすめです。
効果的にアウトするためには、まずインサイドの響きを自分の中にしっかりと定着させることが何よりも大切です。
安定したインサイドの演奏があってこそ、アウトサイドの緊張感が活きてきます。
まずはインサイドを極め、その上でアウトの表現を楽しんでみてください。
その他のペンタトニックスケール
ここで紹介したアウト方法は他のペンタトニックスケールにも使えます。
ジャズでよく使われるペンタトニックスケールはペンタトニックスケールの種類と使えるコード一覧にまとめているので試してみてください。
おすすめ教則本
ペンタトニックスケールについてさらに知識を深めたいときは、ジェリー・バーガンジィ著のインサイドインプロヴィゼイションVol.2 ペンタトニックスケールがおすすめです。
さまざまなペンタトニックスケールの基礎練習からアウト法まで網羅されています。