今週のジャズギターフレーズ(ウェス編 #2)
今回紹介するのは、Ab7コード上でEbm7アルペジオを活用したウェス・モンゴメリーのフレージングです。
3拍子のグルーヴ感とアルペジオの持つシンプルさが融合したリックで、コード進行に奥行きを与えることができます。

Ebm7アルペジオをAb7で使う理由
このリックは、Ab7をV7としたとき、IIm7にあたるEbm7のアルペジオが使われています。

- Ab7のコードトーン:Ab-C-Eb-Gb
- Ebm7のコードトーン:Eb Gb Bb Db
Ebm7の構成音(Eb–Gb–Bb–Db)をAb7から見ると、それぞれ5th – b7th – 9th – 11thになり、コードトーン+テンションとして機能します。
ウェスは、ドミナントに対してIIm7のフレージングを使って、動きや彩りを加える手法を頻繁に用います。
現在では元のコードに対して別のコードを重ねる(想定する)手法を「スーパーインポーズ」と呼んでいます。
リックを自分のものにする3つのヒント
コード進行の中で繰り返し使ってみる
ブルース進行や、リズムチェンジのBセクションなど、ドミナント・コードが続く場面で試してみましょう。
アルペジオの開始音を変えて試す
同じEbm7のアルペジオでも、弾き始める音を変えるだけでフレーズの雰囲気が大きく変わります。
Ebm7のルートから下降

Ebm7のb3rdから下降


フレーズの流れを反対にしてみる
元のリックはEbm7のb7thから下降していますが、これを逆方向に展開して、上昇型にアレンジしてみましょう。
Ebm7のb7thから上昇

Ebm7のルートから上昇

Ebm7のb3rdから上昇

Ebm7の5thから上昇

自分の演奏に取り込むコツ
ウェス・モンゴメリーの魅力は、難解な理論よりも音楽的な直感で作られた“歌えるフレーズ”にあります。
今回のリックは音数こそ少ないですが、スーパーインポーズによってコード感に広がりを与えることができる、実用的で洗練されたフレーズ素材といえます。
まずはゆっくりのテンポから練習して、気持ちよく歌える速さを探してみてください。慣れてきたら他のキーやコードに応用してみるのも効果的な練習方法です。
ウェス・モンゴメリーのスタイルを自分のものに
ウェス・モンゴメリーのリックを単にコピーするだけで終わらせるのではなく、『自分ならこのフレーズをどう活かすか』という点を常に意識することが大切です。
リックはあくまで『素材』です。それをどう料理し、自分の音楽表現に繋げるかが、あなたの個性となるのです。
🎧 次回はII-Vで使えるフレーズを紹介予定!お楽しみに