リックをただコピーするだけで終わらせたくないですよね?
ここでは、ウェス・モンゴメリーが『West Coast Blues』で使ったリックを徹底分析。さらに、リックのアレンジ方法、ii-v-i進行への発展、そしてオリジナルリック作成まで紹介します。
この記事を読めば、リックを深く理解できるだけでなく、自分の演奏に取り入れ、表現の幅を広げることができるようになります。
ウェスのDm7-G7リックと分析法
今回分析するリックはこちら。

ウェス・モンゴメリーのアルバムThe Incredible Jazz Guitar of Wes Montgomery収録の『West Coast Blues』(1:39あたり)で聴けるリックです。 原曲は3/4拍子ですが、この記事では4/4拍子にアレンジして解説します。
リックの分析はとても簡単です。ターゲットノート(1、3拍目)を抜き出し、そこにどんなアプローチノートが使われているかを調べるだけ。
早速やってみましょう。
ターゲットノート
まずはリックの骨格をなしているターゲットノートを抜き出します。

- Dm7のターゲットノート:
- 3拍目にマイナーの響きを決定づけるb3rd。
- G7のターゲットノート:
- 1拍目は5th、3拍目は3rd。
- 補足: 3拍目の3rdは、2拍目ウラにアンティシペーション(音の先取り)されていますが、ここでは3拍目のターゲットノートとして捉えています。
まずはこの「骨組み」となる音の流れをしっかり覚え込みましょう。
アプローチノートの解明
次はターゲットノートに対して、どのようなアプローチノートが使われているかを見ていきます。
まずは4分音符を加えてみましょう。

- Dm7のアプローチノート:
- 11thと9th。どちらもDドリアンスケールの音です。
- G7のアプローチノート:
- 4th。Gミクソリディアンスケールの音です。
どちらもスケール内の音を使っているのが分かります。ここに拍ウラの音を加えて、最終的にどんなアプローチノートが使われているか見てみましょう。
リックの分析結果

- Dm7へのアプローチノート:
- 1拍目ウラはドリアンスケールを使って上からアプローチ。
- 2拍目ウラは半音上からアプローチ。
- 3拍目ウラは3度音程のアルペジオを使って上からアプローチ。
- 4拍目ウラは次のG7のターゲットノートへ半音下からアプローチ。
- G7へのアプローチノート:
- 1拍目ウラは3度音程のアルペジオで上からアプローチ。
- 2拍目ウラはアンティシペーション。
リックの分析はたったこれだけです。ターゲットノートと、そこへ導くアプローチノートをしっかり把握することが大切です。
リック・アレンジ術:アプローチノートを変える
アプローチノートが分かれば、アレンジを加えるのは簡単です。簡単にできるのは、アプローチノートを逆方向にすることです。

- Dm7のアプローチ:
- 1拍目ウラはドリアンスケールを使って下から。
- 2拍目ウラは半音下から。
- 3拍目ウラは3度音程のアルペジオを使って下から。
- 4拍目ウラは半音上から。
- G7のアプローチ:
- 1拍目ウラは3度音程のアルペジオで下から。
たったこれだけでも、元のリックの核となる部分は変えずに、雰囲気をガラリと変えることができます。
アンティシペーションをなくす
もう1つ簡単なアレンジはアンティシペーションをなくしてみることです。
G7の2拍目ウラを3拍目アタマに移動させ、空いた2拍目ウラに新たなアプローチノートを加えてみましょう。
ここではミクソリディアンスケールを使った下からのアプローチと、3度音程のアルペジオを使った上からのアプローチ例を紹介します。
スケールを使った下からのアプローチ

アルペジオを使った上からのアプローチ

加える1音は、G7のコードトーンやスケール音、半音アプローチなど、自由に試してみてください。
ii-v-iで使う
このリックはG7の2拍目ウラで終わっています。逆に言えば、3拍目以降にCMa7へ解決するリックを作ってしまえば、ii-v-iリックとして活用できるのです。
作り方は簡単。アンティシペーションをなくしたアレンジを元に、CMa7のターゲットノートを決め、アプローチノートを加えるだけです。
ここではCMa7の5thに解決するリックと3rdに解決するリックを作ってみましょう。
CMa7の5thに解決するリック

まず、G7の4拍目に好きな音を加えましょう。ここではコードトーンのb7thを加えてみます。

次に、G7の3・4拍目のウラにアプローチノートを加えて完成です。ここでは3度音程のアルペジオを使った下からのアプローチと半音上からのアプローチを加えてみます。
5thに解決するii-v-iリック

同じ手順で3rd解決も作ってみましょう。
CMa7の3rdに解決するリック

ここではG7の4拍目にルートを加えてみます。

G7の3・4拍目のウラにアプローチノートを加えて完成です。ここでは半音上からのアプローチを加えました。
3rdに解決するii-v-iリック

ここまではアンティシペーションをなくしたアレンジから作りましたが、もともとのリックをそのまま使うことも可能です。早速やってみましょう。
元のリックをそのまま使ったアレンジ
G7の3拍目にターゲットノートを加えて、CMa7の5thに解決するリックにしてみましょう。ここではG7のルートをターゲットにしました。

次にG7の4拍目に4分音符を加えます。緊張感が欲しかったのでオルタードテンションの#11thを選びました。

G7の3・4拍目ウラにアプローチノートを加えましょう。ここでは3度音程のアルペジオを使った上からのアプローチと半音上からのアプローチを加えました。
リックをそのまま使った5th解決のii-v-i

同じ手順でCMa7の3rdへ解決するリックも作ってみましょう。ここではG7の3拍目にb9thを選びました。

G7の4拍目に4分音符を加えましょう。ここではルートを選択。

G7の3・4拍目ウラにアプローチノートを加えて完成です。ここでは半音上からのアプローチを使っています。
リックをそのまま使った3rd解決のii-v-i

このように、元のDm7-G7リックに音を加えてCMa7へ解決させれば、ii-v-iで使えるリックにアレンジすることができます。
さらに、最初に紹介したアプローチノートを変えるアレンジと組み合せれば、元のリックのカッコよさを活かしたまま、自分だけのオリジナルii-V-Iリックが作れます。
オリジナルのii-v-iリック

ターゲットノートとアプローチノートに分けて考えれば、どんなリックでも分析でき、それを元にアレンジすることができます。
ぜひ、お気に入りのリックをこの方法で分析してアレンジしてみてください。リックがますます好きになっていくはずです。
出典音源とアルバム情報
今回紹介したリックはThe Incredible Jazz Guitar Of Wes Montgomeryの5曲目、West Coast Bluesの1:39あたりから聴けます。
原曲は4分の3拍子です。