ジャズギターの練習をしていると、「リックは覚えたけど、応用できない…」「同じ練習の繰り返しで、マンネリ気味…」そんな悩みを抱えていませんか?
この記事では、1つのリックを使って、練習をよりクリエイティブで楽しいものにするアイデアをお届けします。リックは単にコピーするだけでなく、応用し練習に取り入れることで、アドリブ能力を向上させる強力なツールになるのです。
今回の主役:ドリアンスケールを使ったリック
今回取り上げるのは、ウェス・モンゴメリーが『West Coast Blues」で使ったリックです。

原曲ではAb7で使っていますが、その音使いを見てみると、Ebm7のコードトーンを中心としたEbドリアンスケールの響きになっています。ウェスはドミナントコードでドリアンの響きをよく使っていました。
ここからは、このリックを「Ebm7で使えるドリアンリック」と捉えて、応用方法を紹介していきます。

実践ヒント:リックを「育てる」応用アイデア
覚えたリックをそのまま使うだけでなく、少し手を加えるだけで表現の幅が大きく広がります。
まず手軽に試せるのがリックを反対方向から弾くこと。元のリックのリズム的な魅力は保ちつつ、新しい響きのリックを生み出すことができます。
反対方向から弾く
Ab7で弾く

Ebm7で弾く

次に挑戦して欲しいのが、使うコードに合わせて数音を変化させる方法です。元のリックはm7なので、ここではmMa7、Ma7、7、7altの4つで試してみましょう。
mMa7に応用
元のリックのb7thを半音上げて7thに変えるだけで、メロディックマイナースケールのリックになります。

Ma7に応用
元のリックのb3rdを3rdに、b7thを7thに変えます。2音変えるだけメジャースケールのリックになります。

7に応用
元のリックのb3rdを3rdにするだけで、ドミナントで使えるミクソリディアンスケールリックになります。

7altに応用
オルタードテンション(b9th、#9th、#11th、b13th)を持つ、オルタードスケールを使っています

このように、リックを様々なコードタイプへ応用していくことで、各コードの特性や響きの違いを実践的に学ぶことができます。これはスケールの知識を深めるだけでなく、指板上の音の配置を把握するトレーニングにも繋がります。
リックをスケール練習に取り入れる
リックをさらに発展させ、スケール練習のように体系的に練習する方法を紹介します。コード進行の流れを意識したフレージングに活かすための基礎力を養います。
ステップ1:リックをIIm7のフレーズとして再構築
今回のEbドリアンリックを練習しやすいように8分音符にしましょう。これが基本形になります。

ステップ2:ダイアトニックコード上でリックを展開する
基本形のメロディの輪郭を保ったまま、ダイアトニックコードに展開していきます。各コードで使えるスケールを意識しながらリックを構築することが重要です。
IIIm7に応用

IVMa7に応用

V7に応用

VIm7に応用

VIIm7(b5)に応用

IMa7に応用

この練習は、リックのアイデアを様々なハーモニーに対応させる能力が養われます。最初はゆっくりと、各コードの響きとリックの音使いを確認しながら進めましょう。慣れてきたら、基本形をメロディックマイナースケールやオルタードスケールに変えた練習してみてください。フレットボード全体の理解が格段に深まります。
リックは創造性を刺激する練習材料
リックを覚えることは、ジャズギターを学ぶ上で重要なステップですが、あくまで出発点に過ぎません。リックを分解し、変化させ、異なる文脈に応用することで、アドリブの自由度が格段に向上します。
今回紹介した応用方法は、ほんの一例です。どんなリックでも、その構成音を理解し、少しの工夫を加えることで、日々の練習を新鮮で刺激的なものに変えることができます。
リックを単なる「暗記したフレーズ」から「自由自在に操れる音楽的アイデア」へと昇華させ、ギターのネック上をより深く、より自由に探求していきましょう。
出典音源とアルバム情報
今回紹介したリックはThe Incredible Jazz Guitar Of Wes Montgomeryの5曲目、West Coast Bluesの1:56あたりから聴けます。
原曲は4分の3拍子です。