アドリブ

リズムチェンジ[A]セクション:リックに頼らないアドリブ構築の全手順

リズムチェンジは速いテンポで演奏されることが多く、Aセクションは2拍ごとにコードが変わるので、ついリックだけでアドリブしてしまいがちです。

しかしリックに頼った演奏だと

  • リックをつぎはぎしているだけでアドリブ感がない
  • そもそも、リックを何十個も覚えられない
  • リックを覚えていないコード進行はどうすればいいか分からない

といった悩みが出てきます。

もちろんリックをたくさん覚えることは大切なことですが、それと同じくらい大切なのが「リックを使わないでアドリブする力」です。

ここで紹介する方法を学べばリックに頼らずアドリブできるようになり、上記の悩みが解消されます。

ぜひリックを使わないアドリブに挑戦してみてください。

リズムチェンジ[A]コード進行

練習用カラオケ(BPM=120)

練習用カラオケ(BPM=200)

リズムチェンジ1-8小節目

コード進行が違うのは5、6小節目だけで、他はI – VI – II – Vの2小節パターンになっています。ここでは1-4小節と5-8小節に分けて練習していきましょう。

[A]1〜4小節目でコードトーンを弾く練習

アドリブの土台作りに欠かせないのがコード進行の響きを覚えること。

そのためにはコードフォームとコードトーンを関連させるのがおすすめです。

はじめから指板上の全範囲を使って覚えようとすると大変なので、ここでは5フレット周辺のポジションを使って紹介します。

コードフォームとコードトーンを関連させて覚える

BbMa7

BbMa7の6弦ルートコードダイアグラム

BbMa7コードトーン

BbMa7のコードトーン

G7

G7の4弦ルートのコードダイアグラム

G7コードトーン

G7のコードトーン

Cm7

Cm7の6弦ルートのコードダイアグラム

Cm7コードトーン

Cm7のコードトーン

F7

F7の5弦ルートのコードダイアグラム

F7コードトーン

F7のコードトーン

※G7の3度は3弦4フレットでも弾けるようにしておくと、ポジション選びの幅が広がります。

各コードとコードトーンを覚えたらカラオケに合わせてコードトーンを弾いていきましょう。

この練習は8分音符を正確に弾くリズムトレーニングにもなります。

各コードのルートからコードトーンを上昇する練習

リズムチェンジ[A]セクション1〜4小節目でコードトーンを各コードから上昇して弾く練習楽譜

各コードのルートからコードトーンを下降する練習

リズムチェンジ[A]セクション1〜4小節目でコードトーンを各コードから下降して弾く練習楽譜

ルートから確実に弾けるようになったら、一番近い次のコードのコードトーンへつなげていきます。

この練習は指板上のコードトーンの配置を確実に覚えるのに効果的です。

一番近い各コードのコードトーンへつなげる練習

リズムチェンジ[A]セクション1〜4小節目でコードトーンをスームズにつなげる練習楽譜

コードトーンを弾いてコード進行の響きを覚えることで、アドリブの土台が完成します。

土台が完成したらアドリブしていきましょう。

[A]1〜4小節目でコードトーンを使ったアドリブ

アドリブといっても何も難しいことはありません。まずはコードトーンの中から1音だけを選んで弾く練習です。

これが、アドリブの基本になります。

コードトーンの中から1音を選んでアドリブ

リズムチェンジ[A]セクション1〜4小節目で各コード、コードトーンから1音選んでアドリブする楽譜

上記はあくまで例なので、自由に音を選んでアドリブしてみてください。

このとき「この音、好きだな」と思うコードトーンを覚えておきましょう。

ターゲットノートがアドリブできるようになったら、その音に向かって自然につながるように音を加えていきます。

8分音符で加えていく方法もありますが、ここでは4分音符を使った方法を紹介します。

ターゲットノートに向かって音を加える

リズムチェンジ[A]セクション1〜4小節目でコードトーンから4分音符を使ってアドリブする楽譜

ターゲットノートに対して音を加えていくという感覚はアドリブに必須です。

はじめのうちは、あらかじめフレーズを決めておく「書きソロ」にしても構いません。

どの音を加えるとカッコよく聴こえるのかを探してみてください。

知っておきたい豆知識

ターゲットノートに向かう音はアプローチノートと呼びます。

アプローチノートを加えられたらリズムに変化をつけていきます。

使う音は変えず、8分音符、8分休符、3連符を使ってリズムをアドリブさせてみましょう。

リズムを変化させるアドリブ

リズムチェンジ[A]セクション1〜4小節目でコードトーンのリズムに変化を加えてアドリブする楽譜

リズムを変化させることでターゲットノートの位置が変わっていきます。

この変化こそがジャズの醍醐味です。どんなリズムを使うとカッコよくなるかを探しながら練習してみてください。

知っておきたい豆知識

ターゲットノートを先取りすることをアンティシペーション
ターゲットノートを遅らせることをディレイドアタックと呼びます。

例えば1小節目4拍目ウラのC音はアンティシペーション。3小節目2拍目ウラのBb音はディレイドアタックです。

[A]1〜4小節目でスケールを弾く練習

コードトーンの響きに慣れたら、表現の幅を広げていくために音数を増やしましょう。

そこで必要になるのがスケールです。ここでは一般によく使われるスケールを使って紹介していきます。

コードフォームとスケールを関連させて覚える

BbMa7

BbMa7の6弦ルートコードダイアグラム

Bbメジャースケール

Bbメジャースケールダイアグラム

G7

G7の4弦ルートのコードダイアグラム

Gオルタードスケール

Gオルタードスケールダイアグラム

Cm7

Cm7の6弦ルートコードダイアグラム

Cドリアンスケール

Cドリアンスケールダイアグラム

F7

F7の5弦ルートコードダイアグラム

Fコンディミ

Fドミナントディミニッシュスケールダイアグラム

スケールの響きを覚えたらカラオケに合わせて弾いていきましょう。

各コードのルートからスケールを上昇する練習

リズムチェンジ[A]セクション1〜4小節目でスケールを各コードから上昇して弾く練習楽譜

各コードのルートからスケールを下降する練習

リズムチェンジ[A]セクション1〜4小節目でスケールを各コードから下降して弾く練習楽譜

指板上のスケール配置を確実に覚えるためスムーズにつなげていきます。

一番近い次のコードのスケールへつなげる練習

リズムチェンジ[A]セクション1〜4小節目でスケールをスームズにつなげる練習楽譜

楽譜は8小節ですが覚えられるまで何小節も続けてみてください。

スケールの響きと配置を覚えたらアドリブしていきましょう。

[A]1〜4小節目でスケールを使ったアドリブ

コードトーンのときと同様に、各コード1音だけでアドリブします。

コードトーンと比べると選択できる音が多いので、7thコードではテンション、それ以外のコードではコードトーンまたは9thを中心に選んでみましょう。

慣れてきたら好きな響きのするスケール音を探しながらアドリブしてみてください。

スケールの中から1音を選んでアドリブ

リズムチェンジ[A]セクション1〜4小節目でスケールから1音選んでアドリブする楽譜

上記の音をターゲットノートとして、4分音符でアプローチノートを加えていきます。

ターゲットノートに向かって1音加える

リズムチェンジ[A]セクション1〜4小節目でスケール音から4分音符を使ってアドリブする楽譜

ターゲットノートに向かう感覚がつかめたら、リズムを変えていきます。ここではリズムの変化に合わせて音も加えてみましょう。

リズムに変化をつけてアドリブ

リズムチェンジ[A]セクション1〜4小節目でスケール音のリズムに変化を加えてアドリブする楽譜

  • コードトーンを使ったアドリブでコード進行の響きを覚る
  • スケールを使ったアドリブで表現の幅を広げていく

この2つの流れで練習するとアドリブの基礎がしっかり身につきます。

同様に5〜8小節目でも練習していきましょう。

[A]5〜8小節目でコードトーンを弾く練習

7、8小節目は1~4小節目と同じなので、ここでは5、6小節目のコードフォームとコードトーンを覚えます。

コードフォームとコードトーンを関連させて覚える

Bb7

Bb7の6弦ルートのコードダイアグラム

Bb7コードトーン

Bb7コードトーン

EbMa7

EbMa7の5弦ルートコードダイアグラム

EbMa7コードトーン

EbMa7コードトーン

Edim

Edimの5弦ルートのコードダイアグラム

Edimコードトーン

Edimコードトーン

リズムトレーニングも兼ねてカラオケに合わせて弾いていきましょう。

各コードのルートからコードトーンを上昇する練習

リズムチェンジ[A]セクション5〜8小節目でコードトーンを各コードから上昇して弾く練習楽譜

各コードのルートからコードトーンを下降する練習

リズムチェンジ[A]セクション5〜8小節目でコードトーンを各コードから下降して弾く練習楽譜

コードトーンの位置を確実に覚えるために一番近い次のコードのコードトーンへつなげていきます。

一番近い次のコードのコードトーンへつなげる練習

リズムチェンジ[A]セクション5〜8小節目でコードトーンをスームズにつなげる練習楽譜

Bb7-EbMaj7-Edim7の響きを覚えたらアドリブしていきましょう。

[A]5〜8小節目でコードトーンを使ったアドリブ

各コード1音(Bb7は2音)使ってアドリブします。

ランダムに選んで弾くというよりは、頭の中に鳴った音を歌うようにギターで弾いてみてください。

コードトーンの中から1音を選んでアドリブ

リズムチェンジ[A]セクション5〜8小節目で各コード、コードトーンから1音選んでアドリブする楽譜

1、3拍目のターゲットノートに対してアプローチノートを加えていきます。

ターゲットノートに向かって1音加える

リズムチェンジ[A]セクション5〜8小節目でコードトーンから4分音符を使ってアドリブする楽譜

リズムに変化をつけてアドリブしてみましょう。リズムと同時に音数も増やしていきます。メロディを作り出すようなイメージで練習してみてください。

リズムを変化させるアドリブ

リズムチェンジ[A]セクション5〜8小節目でコードトーンのリズムに変化を加えてアドリブする楽譜

3連符や裏拍を強調するとジャズらしさが出るので、積極的に使うのがおすすめです。

知っておきたい豆知識

コードトーンを使った練習はコードに合ったインサイドの音をしっかりと覚えることができます。

ジャズではテンションの入ったアウトサイドの音が多用されますが、インサイドの音を身につけておくとアウトサイドの音に対する感覚が洗練されていきます。

[A]5〜8小節目でスケールを弾く練習

コードトーンの響きを覚えたら、表現の幅を広げるためスケールを覚えましょう。

コードフォームとスケールを関連させる

Bb7

Bb7の6弦ルートのコードダイアグラム

Bbコンディミ

Bbドミナントディミニッシュスケール

EbMa7

EbMa7の5弦ルートコードダイアグラム

Ebリディアン

Ebリディアンスケール

Edim

Edimの5弦ルートのコードダイアグラム

Eディミニッシュ

Eディミニッシュスケール

Eディミニッシュスケールのbb7と9は4、5弦の4フレットでも弾けるようにしておくと、ポジション選びの幅が広がります。

リズムトレーニングも兼ねてカラオケに合わせてスケールを弾いていきます。

各コードのルートからスケールを上昇する練習

リズムチェンジ[A]セクション5〜8小節目でスケールを各コードから上昇して弾く練習楽譜

各コードのルートからスケールを下降する練習

リズムチェンジ[A]セクション5〜8小節目でスケールを各コードから下降して弾く練習楽譜

ネック上のスケール配置を確実に覚えるため、スムーズにつなげる練習です。

一番近い各コードのスケールへつなげる練習

リズムチェンジ[A]セクション5〜8小節目でスケールをスームズにつなげる練習楽譜

アドリブは最終的に自分の中に鳴った音を弾くことになるので、練習のときから歌いながら弾くのを習慣づけておきましょう。

[A]5〜8小節目でスケールを使ったアドリブ

各コード1音(Bb7では2音)選んでアドリブしていきます。

ディミニッシュスケールは特徴的な響きなので、どの音がカッコよく響くか探しながら弾いてみてください。

スケールの中から1音を選んでアドリブ

リズムチェンジ[A]セクション5〜8小節目でスケールから1音選んでアドリブする楽譜

ターゲットノートに向かってアプローチノートを加えます。

1音加えて4分音符でアドリブ

リズムチェンジ[A]セクション5〜8小節目でスケール音から4分音符を使ってアドリブする楽譜

半音や全音上、または下からアプローチさせると自然な流れをつくることができます。

アプローチノートに慣れてきたらリズムに変化をつけていきましょう。ここでは8分の3連符を使って音数も増やしています。

リズムに変化をつけてアドリブ

リズムチェンジ[A]セクション5〜8小節目でスケール音のリズムに変化を加えてアドリブする楽譜

ここまでできればリズムチェンジ[A]セクションでのアドリブの基礎は完成です。

最後に[A]セクション全体でアドリブしてみましょう。

BPM=120でのアドリブ例

ターゲットノート、アプローチノート、リズムアレンジ、これら3つを意識しながらアドリブしてみてください。

リズムチェンジ[A]セクションBPM120でのアドリブ例楽譜

BPM=200でのアドリブ例

テンポが速くなってもアドリブの方法は同じです。ターゲットノート、アプローチノート、リズムアレンジを意識してアドリブしてみてください。



リズムチェンジ[A]セクションBPM120でのアドリブ例楽譜ページ1
リズムチェンジ[A]セクションBPM120でのアドリブ例楽譜ページ2

今回は、リックに頼らずにアドリブを組み立てるための練習法を紹介しました。

もちろん、ジャズらしい響きを学ぶためにリックをコピーすることも重要です。しかし、それと同時に、コードトーンやスケール音といった「音の素材」から、自分自身でメロディを創造することで、初めて「本当のアドリブ力」が身につきます。

つまり、アドリブ上達の最短ルートは、以下の2つのアプローチをバランスよく行うことです。

  • インプット:リックをコピーし、ジャズらしい「響き」を覚える。
  • アウトプット:「各コード1音」のアドリブから始め、自分なりの「音使い」を身につける。

まずは、ここで紹介した5フレットのポジションに慣れることから始めてみてください。

そして、他のポジションでも同様に練習し、最終的には指板全体を使った自由なアドリブに挑戦していきましょう。

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