メジャーキーのII-V-Iでのアドリブが難しく感じる原因は主に3つ。
- スケールの使い分けができない
- リックを弾いているだけになってしまう
- ジャズらしく弾けない
ここではこの3つを解決する練習方法を紹介します。この練習を続ければ、
- コード進行を意識したアドリブ
- リックの活用法と発展方法
- ジャズらしいフレージング
ができるようになります。ぜひじっくりと取り組んでみてください。
コード進行の響きとバッキング例
BPM=126
BPM=180
コード進行でアドリブするための最初のステップは、コード進行の響きを覚えることです。そのためにもまずはコードフォームを覚えていきましょう。
ジャズでよく使われるコードフォーム
コードフォームはさまざまありますが、その中でもジャズでよく使われる基本フォームがあります。それが、ルートと3度と7度を使ったフォームです。
5弦ルート、6弦ルートそれぞれを見ていきましょう。
ルート、3度、7度の基本フォーム
Dm7の5弦ルートフォーム

Dm7の6弦ルートフォーム

G7の6弦ルートフォーム

G7の5弦ルートフォーム

CMa7の5弦ルートフォーム

CMa7の6弦ルートフォーム

メトロノームに合わせて3音のコードフォームを使うだけでも十分練習用バッキングになります。また自分で作ることでリズム感を鍛える練習にもなります。
テンションを加えたコードフォーム
ルート、3度、7度のコードフォームに1音加えたテンションフォームを覚えると、バッキングの響きが豊かになります。
Dm9

G7(13)

CMa9

テンションを含んだコードフォームでバッキングした例
より実践的に練習したいときはジェイミー・エーバーソールドのプレイアロングシリーズ「Vol. 3, The II/V7/I Progression」がおすすめです。
各コードで使えるスケール
各コードで使えるスケールは以下の通りです。
コード | 使えるスケール |
Dm7 | Dドリアン、Dメロディックマイナー |
G7 | Gミクソリディアン、Gドミナントディミニッシュ |
CMaj7 | Cメジャー、Cリディアン |
しかし、使えるスケールを弾いてるだけではジャズらしくなりません。
その原因は2つです。
- コード進行を意識していない
- ジャズらしい音使いを知らない
まずはコード進行を意識する練習からはじめていきましょう。
コードトーンを弾いて響きを覚える
コード進行を意識するには、各コードの構成音、つまりコードトーンを弾くのが最適です。
コードトーンを弾く練習はコード進行の響きを覚えるのに役立ち、コードに対してのインサイドの響きも覚えられます。その結果、自分の出している音が、合っているのか外れているのかを、耳で聴き分けることができるようになります。
いきなり指板上全てのコードトーンを覚えようとすると大変なので、ここでは2ndポジション(2フレットに人差し指を置いて弾ける範囲)で弾けるコードトーンに絞って紹介します。(R=ルート、3=3度、5=5度、7=7度)
Dm7

G7

CMa7

指板上でコードトーンの位置がある程度見えてくるまで弾いてみてください。
慣れてきたらバッキングに合わせて弾いていきます。
コードトーンを使った練習法
コードトーンを使った練習には3つの段階があります。
- コードトーンを覚える
- コードトーンをスムーズにつなげる
- リズムを加えてアドリブする
まずはコードトーンを覚える練習から始めましょう。
各コードのルートからコードトーンを弾く
ルートからの上昇
ルートからの下降
この練習は、はじめてコードトーンを弾くときに最適です。8分音符が難しければ、4分音符にしてゆっくり弾いても構いません。
コードトーンの配置とコード進行の響きを覚えることがこの練習の目的です。
慣れてきたらコードトーン同士をつなげていきます。
コードトーンをスムーズにつなげる練習
次のコードに移るときに一番近いコードトーンを弾いていく練習です。
この練習で各コードの横の流れを意識できるようになります。スムーズに繋がるコードトーンの響きを覚えるまで何小節でも続けてみてください。
8小節の例

リズムを取り入れたアドリブ
コードトーンの配置を覚えてスムーズにつなげられるようになったら、リズムを加えてアドリブしてみましょう。
ここでは次の3つのリズムを加えてアドリブしていきます。
コードトーンにリズムを加えたアドリブ例

3つのリズムに慣れてきたら自由にリズムを選んでアドリブしてみてください。
さまざまなリズムを使ったアドリブ例

アドリブで大切なのは頭の中に鳴った音を弾くことです。常に歌いながら練習してみてください。
251リックを作って使う練習
コードトーンでアドリブできるようになってきたら、表現の幅を広げるため音を増やしていきます。
そこで出てくるのがスケールです。
ただ闇雲にスケールを弾くだけではジャズらしくならないので、各コードのアドリブページで紹介しているリック(ジャズらしい音使いのフレーズ)を元にして251リックを作ってみましょう。



各コードのリックをつなげた251リック
Dm7のリック1とG7のリック4を元にした251リックです。CMa7はコードトーンのみです。
Dm7のリック4とCMa7のリック5を元にした251リックです。G7ではミクソリディアンスケールを使っています。
各コードのリック同士でつなげることもできますが、どれか1つは自分で作る練習をしておくと、アドリブしやすくなります。
II-V-Iリック同士をつなげる練習
各コードのリックをつなげたリックは4小節目が全休符になっているので、コードトーンを使って次のリックにスムーズにつながるようにアドリブしてみましょう。
コードトーンを使ってリックをつなげたアドリブ例
よりスムーズにリックをつなげるために、リック自体のリズムに変化をつけてみましょう。
リズムに変化をつけてつなげたアドリブ例
リズムに変化をつけることで自然な流れにすることができます。アドリブは「リズムに音を当てはめる」という意識が大切です。
ここまでできたら、各コードのリックをコードトーンと組み合わせてアドリブしてみましょう。
コードトーン練習は2ndポジション、リックは5thポジションなので、ポジションチェンジの練習にもなります。
コードトーンとリックを使ったアドリブ例

ここでは紹介しているリックを組み合わせていますが、お気に入りアーティストからコピーしたリックなどを取り入れてアドリブしてみてください。
G7でドミナントディミニッシュを使ってみよう
G7ではコードトーンとミクソリディアンスケールを使ってきましたが、ここからはジャズらしさを演出するドミナントディミニッシュスケールを使ってみましょう。
Gドミナントディミニッシュスケールの響き
コード進行の中でスケールを使えるように、終わりの音から一番近い音を探して弾く練習をします。
Gドミナントディミニッシュスケールのリック
スケールはただ弾いているだけではジャズらしくならないので、Gドミナントディミニッシュスケールのリックを覚えていきましょう。
リック1

リック2

リック3

リック4

リック5

リック6

リックを覚えたらDm7、CMa7とつなげてII-V-Iリックを作っていきます。
Gドミナントディミニッシュスケールを使ったII-V-Iリック
II-V-Iリック1
II-V-Iリック2
II-V-Iリック3
II-V-Iリック4
II-V-Iリック5
リックが作れたらリック同士をつなげる練習です。今まで同様3、4小節目はCMa7のコードトーンを使います。
Gドミナントディミニッシュスケールを使ったII-V-Iリックの連結

次はリズムに変化をつけてアドリブをしてみましょう。
コードトーンとリックを使ったアドリブに慣れてきたら、ここまでやってきた練習を全て組み合わせて演奏してみましょう。
Dm7-G7-CMa7でのアドリブ例



アドリブするときに大切なことは、歌いながら弾くことです。はじめはなかなか上手くいかないかもしれませんが、あせらずじっくりと取り組んでみてください。
- バッキングを自作して、コード進行の響きを覚える
- コードトーンを弾いて、ハーモニーの流れを意識する
- リックを使って、ジャズらしい「言葉」を学ぶ
- リズムを加えて、メロディに命を吹き込む
- 常に「歌いながら」演奏する
この5つのステップが、説得力のあるアドリブへの鍵となります。はじめは難しく感じるかもしれませんが、ぜひ、じっくりと取り組んでみてください。