楽譜が読めると、実際に音を出す前にどんな曲なのかをイメージすることができるようになります。

ジャズでは曲のメロディとコード進行を簡略化したリードシートと呼ばれる楽譜を使うので、ここではそのリードシートを読むために必要な基礎知識を紹介していきます。

リードシートで出てくる楽譜記号と名称

リードシートで出てくる音楽記号の名称

どれも必須の用語なのでぜひ覚えて活用してみてください。

音名

音名おんめいは音の高さにつけられた名前のことで、全世界共通です。日本ではイタリア語の音名が有名ですが、ジャズでは英語の音名を使うので、この機会に覚えておきましょう。

英語CDEFGABC
イタリア語ファ
日本語

ちなみに、アメリカでもソルフェージュはイタリア語を使います。

五線譜

音程の高低を表記するために使われるのが五線譜ごせんふです。

五線の楽譜

5本の線と4つの空間があり、下に行くほど低い音、上に行くほど高い音になります。下からそれぞれ第1線〜第5線、第1間〜第4間という名前があります。

また五線譜の上下に追加する線を加線と呼びます。

加線の例

このままでは基準になる音がなく、どこがどの音だか分かりません。そこで出てくるのが音部記号おんぶきごうです。

音部記号

ジャズでよく使われる音部記号はト音記号ヘ音記号です。

ト音記号

ト音記号の楽譜

ト音記号は下から2本目をト音=G音に定めています。ちょうど丸で囲まれた部分です。

トレブルクリフ、Gクリフとも呼ばれ、主にギターやピアノ、ヴォーカルなどの中高音域の楽器の楽譜に使われます。

ヘ音記号

へ音記号の楽譜

ヘ音記号は上から2本目をヘ音=F音に定めています。ちょうど2つの黒丸の間にはさまれた部分です。

ベースクリフ、Fクリフとも呼ばれ、主にベースやドラム、ピアノの低音などの楽譜に使用されています。

ト音記号、ヘ音記号の関係は次の通りです。

へ音記号とト音記号の音関係

赤で囲ったC音はト音記号とヘ音記号をつなぐC音として、ミドルC(中央のド)と呼ばれています。

ハ音記号

ハ音記号はCを反対向きにした記号2つを縦に並べ、その真ん中をハ音=C音に定めた音部記号です。

ハ音記号

ジャズのリードシートには出てきませんが、存在だけ知っておきましょう。

ハ音記号は自由に位置を動かせるのが特徴です。

ハ音記号のいろいろ

それぞれテノール、バリトン、メゾソプラノ、ソプラノに使われます。

調号

音部記号の次に書く記号が調号です。調号はその曲がどんな調(キー)をもとに作られているのかが分かる記号です。

調号の種類はシャープとフラットの2つです。

シャープを使った調号

調号にシャープの付いていないCメジャーとAマイナー楽譜調号にシャープ1つ付いたGメジャーとEマイナー楽譜調号にシャープ2つ付いたDメジャーとBマイナー楽譜調号にシャープ3つ付いたAメジャーとF#マイナー楽譜調号にシャープ4つ付いたEメジャーとC#マイナー楽譜調号にシャープ5つ付いたBメジャーとG#マイナー楽譜調号にシャープ6つ付いたF#メジャーとD#マイナー楽譜調号にシャープ7つ付いたC#メジャーとA#マイナー楽譜

フラットを使った調号

調号にフラットの付いていないCメジャーとAマイナー楽譜調号にフラット1つ付いたFメジャーとDマイナー楽譜調号にフラット2つ付いたBbメジャーとGマイナー楽譜調号にフラット3つ付いたEbメジャーとCマイナー楽譜調号にフラット4つ付いたAbメジャーとFマイナー楽譜調号にフラット5つ付いたDbメジャーとBbマイナー楽譜調号にフラット6つ付いたGbメジャーとEbマイナー楽譜調号にフラット7つ付いたCbメジャーとAbマイナー楽譜

調号からキーを見分ける方法は調号の種類と調(キー)の見分け方で紹介しています。

音の長さ

音部記号で音の高低が分かったら次は音の長さです。音の長さは全音符を1として考えます。

音符の書き方休符の書き方長さ
全音符
全音符
全休符
全休符
1
2分音符
2分音符
2分休符
2分休符
2分の1
4分音符
4分音符
4分休符
4分休符
4分の1
8分音符
8分音符
8分休符
8分休符
8分の1
16分音符
16分音符
16分休符
16分休符
16分の1

元の長さの半分を加える付点

音符または休符に付点をつけると元の長さの半分を加えた長さになります。

付点音符の書き方付点休符の書き方長さ
付点全音符
付点全音符
付点全休符
付点全休符
全音符+2分音符
付点2分音符
付点2分音符
付点2分休符
付点2分休符
2分音符+4分音符
付点4分音符
付点4分音符
付点4分休符
付点4分休符
4分音符+8分音符
付点8分音符
付点8分音符
付点8分休符
付点8分休符
8分音符+16分音符
付点16分音符
付点16分音符
付点16分休符
付点16分休符
16分音符+32分音符

さらに半分の長さを加える複付点音符もありますが、読みづらいためほとんど使われません。

複付点4分音符

複付点4分音符の楽譜

複付点4分休符

複付点4分休符の楽譜

4分音符(または休符)に付点が2つく場合は4分+8分+16分の長さになります。

16分音符と8分音符をつなげる書き方

16分音符と8分音符の組み合わせには、読みやすくする書き方があります。

元のリズムつなげた書き方
8分音符と2つの16分音符8分音符と2つの16分音符を繋げた例
16分音符2つと8分音符16分音符2つと8分音符を繋げた例
16分音符と付点8分音符16分音符と付点8分音符を繋げた例
付点8分音符と16分音符付点8分音符と16分音符を繋げた例
16分の間に8分音符16分の間に8分音符を繋げた例

楽譜によっては、つないでいないこともあるので、どちらの表記でも読めるようにしておきましょう。

拍子記号

拍子記号は1小節にどれだけ音符が入るかを決めています。分母が音符の種類、分子が1小節に入る音符の数です。もっともよく使われるのは4分の4拍子を見てみましょう。

4分の4拍子

4分の4拍子楽譜

4分の4拍子は、1小節に4分音符が4つ入ることを表しています。

4分の4拍子はよく使われることからCommon Timeと呼ばれ、その頭文字をとってCと表記されることもあります。

Cを使った楽譜

音符を入れた4小節の例

4分の4拍子の楽譜

付点音符を含めた4小節の例

付点音符を使った楽譜

小節線の大切さ

小節線は拍子記号の拍に合わせて入れる縦線です。これがないと読みづらい楽譜になってしまいます。

小節線の無い楽譜例

小節線なしの楽譜

4分の3拍子

4分の3拍子

1小節内に4分音符が3つ入る拍子で、ワルツとも呼ばれます

音符を入れた4小節の例

4分の3拍子の楽譜

8分の6拍子

8分の6拍子

1小節内に8分音符が6つ入る拍子です。ジャズのリズムの元は8分の6拍子なので、この拍子の感覚をつかむことはとても大切です。

リズムについてはジャズ特有のリズム、スウィングを習得するための考え方で紹介しています。

音符を入れた4小節の例

8分の6拍子の楽譜

4分の5拍子

4分の5拍子

1小節内に4分音符が5つ入る拍子です。この拍子でもっとも有名な曲がTake Five。まずはこの曲を聴いて5拍子に慣れてみてください。

ジャズでは4分の4拍子の曲を4分の5拍子にアレンジして演奏することも多いです。

音符を入れた4小節の例

4分の5拍子の楽譜

以上の4つがよく使われる拍子です。このほかに4分の7拍子や、ボサノヴァの基本リズムでもある2分の2拍子などがあります。

連符

連符れんぷは拍子記号の拍に出てこない数で分けるときに使われます。ここでは代表的なものをみていきましょう。

半拍3連符

半拍3連符の楽譜

半拍=8分音符を3つに分けると半拍3連になります。

1拍3連

1拍3連の楽譜

1拍=4分音符を3つに分けると1拍3連になります。

2拍3連

2拍3連の楽譜

2拍を3つに分けると2拍3連になります。

2拍3連は1拍3連をもとに作られています。

2拍3連の作り方

4分音符2つを3連符にし、1つおきに弾くと2拍3連になります。

3拍4連

3拍を4つに分けるのが3拍4連です。

3拍4連は16分音符をもとに作られています。

3拍を4つに分けるのが3拍4連の楽譜

4分音符を16分音符にして、3つおきに弾くと3拍4連になります。

4拍5連

4拍を5つに分ける4拍5連

4拍5連は5連符をもとに作られています。

2拍5連の作り方
2拍5連の作り方-2

4分音符を5連符に分け、1つおきに弾くと2拍5連符が出来上がります。

4拍5連の作り方

2拍5連を1つおきに弾くと4拍5連が出来上がります。

臨時記号

音符の高さを半音単位で変えることのできる記号です。全部で5種類あります。

表記呼び方効果
臨時記号シャープシャープ半音上げる
臨時記号フラットフラット半音下げる
臨時記号ナチュラルナチュラル元の音程に戻す
臨時記号ダブルシャープダブルシャープ1音上げる
臨時記号ダブルフラットダブルフラット1音下げる

臨時記号の効果は、1小節内の同じ音程の音のみに影響します。

楽譜上での例

臨時記号の例

最初のA音はシャープがついているのでA#になります。2番目は臨時記号のついたAと同じ音域なのでA#になります。3番目はオクターブ高いので、A#ではなくAになります。4番目の音は新しい小節になったので、前の小節の臨時記号の効果が無くなりAになります。

臨時記号を使った音を基の音程に戻す時はナチュラルを使います。

ナチュラルを使った楽譜例

ナチュラルを使った臨時記号の例

テンポ表記

テンポはその曲をどのくらいの速さで演奏するかを表した記号です。ジャズでよく使う書き方は主に2つです。

4分音符を基準にした書き方

4分音符=120

4分の4拍子、4分の3拍子、4分の5拍子など、4分音符を基準とする拍子記号の曲に使われます。

BPM

4分音符を基準にしたテンポではBPMを使うこともあります。

BPM(ビーピーエム)はビーツ・パー・ミニッツ(Beats Per Minute)の略で1分間に何拍刻むかの意味です。

4分の4拍子の曲でBPM=120と表記があれば、4分音符が1分間に120回刻める速さとなります。

時計の秒針はBPM=60です。

8分音符を基準にした書き方

8分音符=120

8分の6拍子、8分の12拍子など8分音符を基準とする拍子記号に使われます。

8分を基準にした曲で、テンポが速すぎる場合は付点4分を使うこともあります。

付点4分音符を基準にした書き方

付点4分音符=120

8分音符=120なら、付点4分音符=40となります。

リハーサルマーク

ジャズの楽譜に欠かせないのがリハーサルマークです。リハーサルマークのない楽譜とある楽譜を比べてみてください。

リハーサルマークなし

メロディと小節線だけの楽譜

リハーサルマークあり

セクションをつけた楽譜

リハーサルマークがあるとイントロや各セクションの切れ目が分かり、曲の流れを瞬時に判断できるようになります。

使い方はシンプルに、イントロには[INTRO.]。その後はセクションごとに[A]から順に振っていきます。Aセクションを2回くり返す場合などは[A']のように’(プライム)を使った表記を使う場合もあります。

ただ[']は小さく見づらいこともあるので、[2A]、[2B]など出てくる回数に応じた数字を使う方法もあります。

コードネーム

ジャズのアドリブをする上で欠かせないのがコードネームです。先ほどの楽譜にコードネームを付けると次のようになります。

コードネームをつけた楽譜

ジャズミュージシャンはコードネームから使える音を瞬時に判断してアドリブしています。そのためコードネームを正確に読めるようにしておくことが必須です。

しかしコードネームの表記に関しては決まりがありません。アーティスト本人や出版社ごとにも表記に違いがあるので、どんな表記でも読めるようにしておく必要があります。

jazzguitarstyle.comで使っている表記と、よく使われる表記をまとめたので参考にしてみてください。

ギターは移調楽器

ギターの音域を楽譜に書くと次のようになります。

ギターの音域楽譜

ピアノでこの音域を弾くとオクターブ高くなります。

ピアノの音域楽譜

ギターは五線譜に書かれた音よりもオクターブ下の音がでることから、移調楽器に分類されることがあります。ただ調は変わらないので、厳密にいうと移高楽器になります。

ジャズの楽譜を読み書きする

楽譜知識を深めるために大切なことはジャズの楽譜(リードシート)を読むことです。jazzguitarstyle.comでもパブリックドメインになったリードシートを公開しているので、原曲と合わせながら読んでみてください。

また読むと同時に自分で書いてみることも大切です。クリフォード・ブラウンのSanduを題材にリードシートが出来上がるまでを紹介しているので合わせて参考にしてください。

聴いたことのない曲でも楽譜だけをみてイメージできる力と、楽譜のない曲を自分で楽譜にする力を身につけてジャズをより深く満喫してください。

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