カウンターライン、カウンターポイントと呼ばれる技術は、どのように学んでいけばよいのでしょうか?
また、おすすめのアーティストや、読み物などもあれば、是非ご教授いただきたいです。

ジャズスタンダードのメロディをコピーするのがおすすめです

カウンターポイントは主旋律に対する対旋律のことで、日本では対位法と呼ばれ作曲の技法として有名です。ただジャズでは教科書になるような本が無いのでメロディをコピーして学ぶしかないのが現状です。

カウンターラインはカウンターポイントの元になる旋律、つまりターゲットノートのことなので、カウンターポイントをコピーすればカウンターラインも分かります。

カウンターポイントはホーンセクションが2人以上の曲で必ずと言っていいほど出てきます。ここではタッド・ダメロン作曲のLady Birdの例を紹介します。

Lady Birdでの実例

1〜4小節目のメロディ
タッド・ダメロン作曲Lady Birdのメロディ4小節楽譜

テナーサック1のカウンターポイント
タッド・ダメロン作曲Lady Birdのメロディ4小節のカウンターポイント1楽譜

カウンターポイントをターゲットノートとアプローチノートに分けると次のようになります。

テナーサック1のターゲットノート
タッド・ダメロン作曲Lady Birdのカウンターポイント1のターゲットノート楽譜

Bb7で#9thを使っているのがジャズらしいアプローチです。#9th-9thのターゲットノートはよく使われます。

テナーサック1のアプローチノート
タッド・ダメロン作曲Lady Birdのカウンターポイント1のアプローチノート楽譜

アプローチノートの種類
  • DA:ディレイドアタック
  • CNT:クロマチックネイバートーン
  • NT:ネイバートーン
  • ARP:アルペジオ(ここではFm7のb3rd-5th)
  • AN:アンティシペーション

ターゲットノートとアプローチノートの仕組みは理論的な知識が必要なので、はじめは「こういう考え方があるんだ」という程度にして、たくさんのカウンターポイントをコピーしていくことが習得の近道だと思います。

しっかりと学びたい!という場合は以下のページで紹介しているので参考にしてください。

テナーサック2のカウンターポイント
タッド・ダメロン作曲Lady Birdのメロディ4小節のカウンターポイント2楽譜

テナーサック2のターゲットノート
タッド・ダメロン作曲Lady Birdのカウンターポイント2のターゲットノート楽譜

CMa7で使っている#5thが特徴的なサウンドです。通常使わない音をカンターラインに使うことで印象づけることができます。

テナーサック2のアプローチノート
タッド・ダメロン作曲Lady Birdのカウンターポイント2のアプローチノート楽譜

アプローチノートの種類
  • DA:ディレイドアタック
  • CNT:クロマチックネイバートーン
  • NT:ネイバートーン
  • ARP:アルペジオ(ここではFm7のb7th-9th)
  • AN:アンティシペーション

アプローチノートを見ると何かに気づきませんか?実は、テナーサック1のカウンターポイントと全く同じアプローチノートを使っているのです。アプローチノートを同じにすることで、別々のカウンターポイントに統一感がでます。

またカウンターポイントはコンピングとしても活用できます。

カウンターポイントを使ったコンピングアイデア
タッド・ダメロン作曲Lady Birdのメロディ4小節のカウンターポイントを使ったコンピング楽譜

スタンダードの中でも2管以上の編成の曲ではカウンターポイントが必ずと言っていいほど出てくるので、ぜひコピーして研究してみてください。

ジャズギタリストのコンピングから学ぶ

「カウンターポイントがコンピングに使える」ということはつまり、コンピングからカウンターポイントを学ぶこともできます。私がよく研究していたのは、ソニーロリンズのアルバム「The Bridge」でのジムホールの演奏です。

ジムホールのコンピング
Without a songでのジムホールのコンピング楽譜

ジムホールのコンピング・ターゲットノート
Without a songでのジムホールのコンピングのターゲットノート楽譜

ジムホールのコンピング・アプローチノート
Without a songでのジムホールのコンピングのアプローチノート楽譜

アプローチノートの種類
  • ARP:アルペジオ(5thからの単音アルペジオ)
  • CNT:クロマチックネイバートーン
  • AN:アンティシペーション
  • ARP:アルペジオ(ルートからの単音アルペジオ)
  • CNT:クロマチックネイバートーン
  • AN:アンティシペーション

メロディの隙間を埋める合いの手を使ったコンピングです。厳密にはカウンターポイントとは呼びませんが、作り方のアイデアとして紹介しました。

ジムホールのコンピングはコードトーンを主体にしているので、分析しやすいのが特徴です。その洗練された音づかいをぜひ研究してみてください。

まとめ

残念ながらジャズのカウンターポイントに特化した読み物はありませんが、ジャズのメロディをコピーしていくことで、自分なりの手法が身につくと思います。

タッドダメロンの他に、マイルスデイビスとギルエヴァンスのアルバムもおすすめです。

『Miles Ahead』

1957年発売
Miles Davis – Flugelhorn
Gil Evans – Arranger and Conductor

ジャズギタリストのコンピングはカウンターポイントのアイデアの宝庫なので、コンピングをコピーするのも学ぶのに最適です。特にソニーロリンズのアルバム「The Bridge」でのジムホールの演奏はまさに教科書なので、ぜひ聴き込んでみてください。

『The Bridge』

1962年発売
Sonny Rollins – tenor saxophone
Jim Hall – guitar
Bob Cranshaw – bass
Ben Riley – drums

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